日本は、年間約1兆円もの食料を中国から輸入している。残留農薬が問題になったことから生鮮野菜は敬遠される傾向にあるが、食材は加工食品に姿を変え、毎日の食卓や外食の材に供される。これらに汚染された食材は含まれていないのか。本誌はサンプル調査を実施した。ジャーナリストの鵜飼克郎氏が報告する。
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関東にある業者向けスーパー。午後には多くの飲食店の仕入れ担当者に混じって一般の買い物客の姿も見られる。カートを押しながら、原産地表示を見ることなく次々と商品を放り込む人も多い。
ここでは安さと豊富な品数をウリに、「ビーフン」や「うずらの卵」など多くの中国産の加工食品が揃う。激安で有名な都内の別のスーパーでも、中国産加工食品が並ぶ。
取材班は複数のスーパーで原産国「中国」と明記された40点あまりの加工食品を購入。農民運動全国連合会(農民連)食品分析センターに、それらに含まれる重金属、特に中国でも問題になったカドミウムと鉛の量を検査してもらった。
信州大学医学部の野見山哲生教授(衛生学)はこう語る。
「イタイイタイ病で有名なカドミウムは、腎臓の機能を低下させる恐れがある。鉛は微量ならば排泄されますが、継続的に高い数値を摂取すると、血中濃度が上がって脳障害、神経系への影響を及ぼすとされています」
特に鉛は体重の少ない乳幼児や胎児にとって脅威となる。
検査結果は、驚くべきものだった。カドミウムと鉛がそれぞれ、緑茶(ティーバッグ)からは0.12ppmと2.69 ppm、干し椎茸(香信)は0.53 ppmと0.11 ppm、干し椎茸(どんこ)は0.49 ppmと0.10 ppm、切り干し大根は0.27 ppmと0.25 ppm、きくらげが0.01 ppmと0.23 ppm検出された。乾燥わかめとビーフンは、鉛こそ検出下限未満だったが、カドミウムはそれぞれ1.86 ppmに0.14 ppm検出された。(※検出下限は0.01 ppm)
緑茶や干し椎茸、乾燥ワカメなど乾燥させてある加工商品に多いのは乾燥により凝縮されるためだ。数字を読むには若干の解説が必要になる。
例えば緑茶(鉛2.69ppm)。この商品はティーバッグで、1杯分5gとなっている。それに含まれる鉛は13.45マイクログラム(1マイクログラムは1000分の1ミリグラム)。
WHO(世界保健機関)とFAO(食糧農業機関)が共同で設置する専門家会議・JECFAは、鉛の暫定耐容週間摂取量について、子供への影響が大きいとしたうえで、1986年に「1週間で体重1キログラムあたり25マイクログラム」と設定した。体重12キロの幼児なら耐容量は週300マイクログラムとなる。単純計算で前述のティーバッグの鉛をすべて摂取したとすれば週23杯、1日3杯でギリギリになる。
ただし、財団法人・政治経済研究所評議員で食品に含まれる化学物質の問題に詳しい小野塚春吉氏は「検査は検体(サンプル)が1つなので商品全体の危険性を表わす正確なデータとはならないことに留意すべき」とした上で、「鉛は水に溶けにくいので、ティーバッグならそこまで摂取量は増えないはず」と語る。
一方で、この数値に懸念を示すのは中国の食品汚染問題に詳しいジャーナリストの郡司和夫氏だ。
「最近は、お湯で溶かすだけの粉末茶・粉砕茶が出回っています。業務用給茶機や飲食店向けだけではなく家庭用もある。これはお茶の葉を粉々に砕いたものなので、鉛が入っていればまるごと摂取してしまうことになります」
※SAPIO2013年5月号