地震大国ニッポンの最深部には、繰り返し地震を引き起こすとされる「未知の活断層」の存在が囁かれている。
東海地震が警戒されている名古屋でも、これまで知られていなかった活断層の存在が明らかになった。地理学が専門の立命館大学・高橋学教授が語る。
「名古屋駅や繁華街の栄などに活断層が通っていることが最近になってわかりました。1891年に濃尾地震という、内陸直下型では最大級の地震が岐阜・愛知両県で起きていますが、その震源である岐阜県本巣市あたりまでつながっている巨大な断層と見られている。今後、注視していく必要があります」
濃尾地震は日本の陸域で発生した地震としては観測史上最大で、その規模はM8.0、あるいはM8.4とする説もある。それに匹敵する大地震が名古屋の直下で発生する危険性があるというのだ。
急速な都市化が進む以前の昭和40年代までに活断層研究の進んだ関西では、既に数多くの活断層が発見されている。しかしそれでも未知数の部分はまだまだあるという。
「京都はいくつもの活断層に固まれていて、京都盆地は活断層が作ったといわれているほど。その南側にも軟らかい地層が存在しており、そこに未発見の活断層があるのではないかとの声もあります」(前出・高橋教授)
奈良西部の活断層を指摘する地震学者もいる。地震考古学を専門とする産業技術総合研究所の寒川旭・客員研究員はこう話す。
「1936年、大阪と奈良の県境付近で、河内大和地震という震災がありました。M6.4規模で死者は8人に及んだ。だが、地震を起こした活断層ははっきりとわかっていない。未知の活断層が潜んでいるのではないか」
大阪でも、2012年10月に大阪市浪速区を通る新たな断層が見つかり、現在調査中だ。
すでに発見されている上町断層の一部で、本体から枝分かれした断層と見られるが、これまでに知られている断層部分を含めると、その長さは約20キロ。つまりM7クラスの地震を起こす可能性がある。
「北海道や九州では、研究者が少ないために活断層の研究が進んでいないのが現状です。そのため活断層があることは確実なのに発見に至っていないものがあると見られる。また東北では火山の噴火が活発なために活断層が見えづらくなっているという事情もある」(前出・高橋教授)
全国いたるところに“未知の活断層”が存在することは確実なのである。
※週刊ポスト2013年5月3・10日号