今、全国の自治体が熾烈な選挙戦を繰り広げているのが、日本百貨店協会が主催する「ご当地キャラ総選挙」である。いわゆる「ゆるキャラ」の人気投票をするイベントである。
3月20日に始まった予備選挙のネット投票はすでに締め切られ、5月1日には全国7地区の上位3キャラが決定(関東は6キャラ)。その後、地区予選を経て、8月上旬の決勝大会でナンバー1が決定する。
のべ半年間にもわたる長丁場だが、全国516のゆるキャラが立候補しているだけあって、選挙活動はヒートアップしている。名物の鰻にちなんだ「うなりくん」を擁する千葉県成田市観光プロモーション課の担当者がいう。
「総選挙に向けて、多彩な活動を展開中です。例えば4月中旬に催された市内イベント『成田太鼓祭』にもうなりくんが出演。20数万人もの観光客が訪れる大規模な催しなので、うなりくん専用ブースを設け、訪れた観光客らに投票を呼びかけるなどのPR活動を行ないました」
だが、熱心さが行きすぎたのか、予備選挙では不正投票問題も発生した。1日で多くても1000ポイント程度だった兵庫県高砂市の「ぼっくりん」(名前は「相生の松」の松ぼっくりに由来)に突然2万ポイント台の投票が集中。近畿地区のトップに躍り出たことから、疑惑が持たれたのである。
これには当の高砂市も困惑し、一時、立候補を辞退する騒ぎにも発展した。市の担当者がその顛末を説明する。
「ぼっくりんも含めて、近畿地区のキャラクターが軒並み万単位で伸びていたので、おかしいと思ったら、パソコンに詳しい人なら1人で何万回も簡単に投票できることがわかったんです。ゆるキャラ選挙といえど、公平に投票しないと他のキャラや団体に申し訳ない。ルール違反の投票が行なわれたことがはっきりしているなら辞退すべきと思い、百貨店協会に問い合わせました」
同協会でも明確な確認はとれなかったものの、
「『今後同様のことがあれば不正な票は削除するし、1人1票でお願いする旨をHPに記載するから辞退しないでほしい』といわれ、辞退は撤回しました」(高砂市の担当者)
かくして、ぼっくりんは現在も選挙活動を鋭意続行中である。
※週刊ポスト2013年5月17日号