かつて厳しい安倍批判を売りにしていた朝日新聞だが、社説で経済政策をべた褒めするなど、最近の論調が一変している。首相就任前に朝日の社長と安倍氏が極秘会談し、“手打ち”したとの証言もある。
読者は朝日の“変節”をしっかり見抜いている。東京都内の朝日の販売店(ASA)経営者はそれをひしひしと感じ取っている。
「最近、購読者から『記事がつまらなくなった』『以前は紙面がとんがっていたが、今は戦っている感じがしない』といった声が非常に増えている。昔からずっと読んでいる人ほど、そう感じるようです。私から見ても、一体、右を向いているのか左を見ているのかわからないお茶を濁すような書き方ばかりで、朝日らしさが減った。これが部数に響かないかと心配ですね」
そうなったとき、最後に笑うのは誰か。
かつて「朝日新聞は読まない」と公言していた安倍首相は、最近よく読むようになり、気にいった記事があると親しい朝日の記者に、「あの記事はよかった」と電話してくるという。情けないのは、それを聞いた若い記者たちが、「総理もうちの新聞を読んでくれている」と喜んでいることだ。
いまや社長から一線記者まで政治との距離の置き方も批判精神も忘れてしまったことが、朝日新聞の一番の危機ではないか。
※週刊ポスト2013年5月17日号