ここしばらくの議論になっていた「道州制」が安倍晋三首相の肝いりで導入に向けて動き出した。 自公政権が掲げる「5年以内に道州制移行」が実現した場合、現在の地価はどう変わるのか。
なお、首相の諮問機関である地方制度調査会は現時点で3つの道州制区割り案(9州・11州・13州)を公表しているが、シミュレーションではそのうち現在の地域構成にもっとも近く、実現が有力視される11州を想定した。ここでは南関東州の変化を見てみよう。
東京については、東京23区、あるいは千代田区・中央区・港区の都心3区だけを米国のワシントンDCのように特別区として独立させる案があるが、いずれにせよ現在の東京都と周囲の県との関係性は変わってくる。
南関東州の州都としてさらなる繁栄を極めるだろう新宿区や、州随一の高級住宅地となる世田谷区が大幅アップ。一方で、これまで住所が「東京都」であることで首都圏エリアでのブランド価値を保ってきた多摩地区など23区外のエリアでは、地価下落の可能性が。
「たとえば府中市は、東京都府中市でなく南関東州府中市となれば東京ブランドがなくなり、中央エリアとの距離感でいえば神奈川県の川崎市や千葉県の松戸市、市川市との差がなくなってしまう。ただし八王子のようにもともと独立した経済圏を確立している地域は例外で、道州制の影響を受けにくく、地価も下がりません」(不動産コンサルタント・平野雅之氏)
※週刊ポスト2013年5月17日号