遺骨をお墓に納めずに、海や山などに撒く葬法である「散骨」が人気だ。横浜市が今年3月に取りまとめた「墓地に関する市民アンケート調査」では、22.6%の人が散骨をしたい(されたい)と答えている。
散骨にはさまざまな方法がある。船で海上に出て行なう海洋葬、山林の所有者の許可を得て行なう山林葬、高空から海洋などに撒く空中葬などが一般的だ。ユニークなものでは専用カプセルに入れた遺骨をロケットで宇宙に打ち上げる宇宙葬も行なわれるようになった。
お墓選びなどのサポートサービスを手掛ける「お墓案内センター」の寺田良平・代表はこういう。
「5年ほど前に希望する人が急増した散骨は、今はブームが落ち着いた感があります。『やってみたけれど後悔した』という人がいたり、樹木葬など別の選択肢も増えていることが、その背景にあると見ています。
たとえば、散骨後に故人の兄弟や親戚から、『故人の遺志はどうあれ、お墓は絶対に必要だった』と非難を受けるケースはよくあるようです。また、『いざお参りしたくても、祈りの対象がない』と遺族が痛恨の声を漏らすこともあります」
そもそも日本人の気質には合わないのではないかと指摘するのは、エンディングコンサルタントの佐々木悦子氏だ。
「たしかにロマンチックなイメージがあるのかもしれませんが、骨を撒くのは一瞬のことです。墓石のように永続的に故人を感じられるのとは違います。
そもそも、日本人は遠く海外で戦死した方の遺骨を、戦後何十年経っても収集するほど遺骨を心の拠り所としています。骨を撒いてしまうのは日本人の感性にそぐわないのかもしれません」
散骨には法律上の規制はなく、法務省の見解では、「節度を持って行なえば遺骨遺棄罪には当たらない」とされている。ただし、自治体によっては条例で散骨を禁止しているところもある。意中の場所があっても、その地域で可能かどうかの役所への確認が必要だ。
また、どこであれ、散骨しても、土をかければ「墓埋法」違反になる。当然ながら、散骨は周囲の人たちの理解を得て、マナーを守ることが何より肝心だ。
※週刊ポスト2013年5月17日号