国際情報

中国経済がアベノミクスで失速 製造業不振にインフレ懸念も

 国内で景気回復の期待感だけは高まったアベノミクス。一方で、中国における負の影響は目に見えてきている。ジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 どうやらアベノミクスは、これまで絶好調だった中国経済の失速に決定的な役割を果たしたようだ。

 4月末の中国メディアは、中国のPMI(製造業購買担当者景気指数)が低下したことを一斉に報じている。景況感の指標ともされるPMIの低下は、需要の弱まりを示しているとされ、なかでも輸出の新規受注を記す数字が昨年12月以来初めて下がったことも話題となった。

 このことは外需の不振が製造業の回復の足を引っ張っていることを裏付けた結果として受け止められているのだ。

 では、なぜ外需が不振かといえば、もちろん最大の輸出先であったEUの消費が欧州金融危機によって陰ったままであることが挙げられるが、最近ではもっぱら人民元レートの問題と結びつけて語られるようになっているのだ。

 4月10日付の『新京報』は、〈6か月の間に対日本円レートが20%も切り上がった〉として、これが〈中国の輸出とインフレという二つの意味でプレッシャーになっている〉と分析した記事を載せている。

 アベノミクスの金融緩和によってつくり出された円安によって韓国経済が大きな打撃を受けたことは広く知られているが、やはり中国の輸出にも大きな影響が及ぶことになったのである。

 それと同時に中国によって重要なのはインフレへの影響だ。中国の為替政策は、管理フロートと呼ばれるもので変動幅を一定の範囲内に収めるという手法だ。問題は、為替相場を管理することは、市場にある元高圧力と戦うことでもある。つまり、円買いと元売りを行うことになるため、どうしても元が市場にあふれてしまうことになる。

 もしインフレを放置すれば中国政府としては最も警戒しなくてはならない貧困層の生活を直撃することになるという政治的なリスクにとどまらず、中国経済にとっていまや最大のけん引力になっている公共事業を行うことも躊躇われるという二重苦に陥ってしまうのである。

 結果、中国は元安を維持しながら輸出で稼ぐという一つの太い柱を諦めざるを得なくなってきているのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン