中国には実は親日派、知日派も少なくないが、表に出てくることはほとんどない。というのも一度“親日派”のレッテルを貼られると、ネット上で漢奸(売国奴)としてリストアップされ、半永久的に批判されることになるからだという。
中立的な立場を取ろうとしたり、冷静な言動を呼びかけるだけでも親日的と見なされ、叩かれる。そのため、最近ではこうした“親日舌禍事件”が続発している。
とりわけ厳しい批判にさらされたのが、尖閣諸島の日本国有化が注目された昨年8月、過激な反日デモを諫める発言した人たちだ。
人民日報日本支社長の韓暁清氏は、日本大使公用車の襲撃事件について「やったのは狭隘な愛国主義者」とテレビで批判し、「釣魚島を理由に、日本の友人を追い出してはならない」と発言、日本国内向けの華字紙で『保釣害国論』という論考を発表した。『保釣害国論』とは、「保釣」つまり釣魚島領有を主張し守ろうとする愛国主義者が国を害するという意味だが、韓氏は「売国奴」「日本の犬」と大バッシングを受け、「日本国籍者だ」というデマまで流された。
結局、韓氏は翌9月にネットメディア・環球網に、「自分は中国籍であり、正真正銘の愛国者だ」との謝罪コメントを発表することになった。
広東捷盈電子科技取締副主席の林凡女史は同じく昨年8月、「人民日報が過去に釣魚島は日本のものだったと認める記事を書いていた」と中国版ツイッター「微博」で流すと、翌日には林女史のすべての発言が削除され、ネット上には「殺す」という物騒な書き込みが相次いだ。林女史は事実を指摘しただけだが、中国では“都合の悪い事実”は発言者もろとも抹殺するのが当たり前のようだ。
※週刊ポスト2013年5月24日号