「野党時代とはまるで違う。パーティ券が売れて売れてしょうがない」──そう笑いが止まらない様子なのが自民党ベテラン議員の資金集め担当秘書だ。自民党では現在、議員や各派閥が連日のようにパーティを開いており、大臣や党幹部たちのスケジュール帳はパーティの挨拶で埋まっている。
集客力も野党時代とは比較にならない。二階派が5月7日の派閥パーティでゼネコン関係者など3000人を集めると、安倍首相の出身派閥・町村派は「最大派閥の面子に賭けても負けるな」と5月13日のパーティで4000人を集めた。1枚2万円のパー券の売り上げ枚数は、「参加客の3~5倍ほどが目安」(ベテラン秘書)といわれるだけに、二階派は1晩で3億円、町村派は1晩で4億円を荒稼ぎしたと見られる。
それはまさにアベノミクスの三本の矢の一つ、「財政出動」の効果だ。自民党は今後10年間で200兆円の事業費をつぎ込んで社会資本整備を進める「国土強靱化」を公約に掲げ、安倍政権は手始めに今年2月、約13兆円の超大型補正予算を組んで公共事業費を2倍に増やす大盤振る舞いをした。
地方ゼネコンの役員は、「これまでは献金やパー券購入を絞ってきたが、震災復興に国土強靱化が重なったいまカネを出さないと出遅れる。旧知の自民党議員に頼まれれば、政治資金収支報告書に会社名が載らないパー券10枚(20万円)までお付き合いすることにしている」と明かす。
売る側は、「アベノミクスが息切れすれば企業の期待もしぼむ。いいなりにパー券を買ってくれる今がチャンスだから、集められるだけ資金を集めておく。みんなそう考えているから選挙を控えた参院議員だけでなく、衆院議員もこぞってパーティを開いている」(前出の資金集め担当秘書)と、“稼ぐなら今でしょ!”との本音を隠さない。
まさにアベノミクスの“期待あおり商法”で、3年間の野党暮らしで枯渇した政治資金を一気に取り戻そうとしているわけである。
アベノミクスで最も潤っているのは、円安の恩恵を受ける輸出企業や株高に沸く証券会社かと思いきや、実は、濡れ手で粟の政治家たちなのである。
※週刊ポスト2013年5月31日号