アベノミクスの恩恵を受けている企業はごく一部。大企業の正社員といえども、リストラの危機に瀕しているのが現状だ。リストラ対象者を小さな部屋に押し込め、単純作業に従事させる「追い出し部屋」が社会問題化したが、それは氷山の一角。実際にはもっと巧妙なリストラが横行している。 ある大手電機メーカーに勤務するN氏(42)が嘆く。
「昨年後半からリストラが始まりましたが、自分はシステム関係の花形部署にいたので安心していました。ところが突然、人事部に呼ばれ、こう言われたんです。『君は趣味の世界でかなり活躍してるらしいねぇ。そっちで頑張ったほうがいいんじゃないか』と。愕然としましたよ」
N氏はアニメやマンガが大好きで、アニメや映画を評論するブログやツイッターを展開していた。もちろん匿名で、本名とは別のアカウントを使っていたのだが、それが人事部に知られてしまったのだという。
しかし、リストラ工作の本番はこの後だった。
「ある日、出社すると、あるアニメを絶賛したブログのページのコピーが社内に出回っていた。以来、完全にアキバ系だというレッテルを貼られ、部署内では“40を過ぎて独身なのはおかしい。何か変な性癖があるんじゃないか”と怪しい目で見られるように。こんなご時世ですから、できれば退職せずに、部署を変えたいんですが……」(N氏)
N氏のアカウントの存在を知っているのは、信頼できると思っていた同僚数人だけ。そのほとんどが既に子会社に飛ばされている。「まだ本社に残っている自分を嵌めるためにかつての同僚がやったのでは……」
N氏はいま、疑心暗鬼だ。人事コンサルタントが語った。
「匿名アカウントでも、メールアドレスなどで検索すれば、本名を割り出すのは簡単。企業によっては、社員のフェイスブックやツイッターの内容を逐一チェックしているところもある。そして、いざという時には“お前、こんな書き込みをしてただろ”といってリストラや左遷の口実にするわけです。自分の弱みになるようなことは書かないほうが無難です」
※週刊ポスト2013年5月31日号