3人の死者と約300人の負傷者を生んだ米ボストン爆破テロ事件から1か月が経とうとしている。犯人とされるチェチェン出身の兄弟のうち、警察に射殺された兄のタメルラン・ツァルナエフ容疑者は密かに埋葬され、弟のジョハル容疑者は銃撃戦で喉を撃たれ、彼の口から事件の真相が語られることはない(取り調べは筆談)。
だが、この事件には見過ごすことのできない重大疑惑があると、本誌前号で元外務省国際情報局長の孫崎享氏は指摘した。兄のタメルラン容疑者はもともと反ロシア活動を行なうCIAの協力者だったというのだ(*)。
【*注】兄のタメルラン容疑者は、かねて反ロシア活動に参加し、ロシア連邦保安庁はアメリカ政府に彼に関する捜査依頼をしていた。彼が関わる反ロシア組織には、CIAが間接的な資金援助をしていたことから、容疑者とCIAの関係が浮上した。
孫崎氏は「CIAが今回のテロ事件に関与していた可能性もある」という。いったい事件の真相はどこにあるのか。
このたび本誌は、事件の捜査にたずさわるアメリカの捜査機関関係者A氏から重要な証言を得た。A氏は、事件現場の写真を本誌記者の目の前に広げ、こういった。「現場写真を精緻に分析すると、数々の不審な点が浮かび上がってくる」
A氏が最初に示したのが、爆発後の写真だ。写っているのは、爆発で両脚を失った男性である。この場面は事件後に数々のメディアが報じたので、強く記憶に残っている人も多いのではないか。
「この写真は爆発から6分後に通信社が撮ったものだが、彼が運ばれて来た道路には血痕が一滴もない。爆発直後の写真を見てもわかる。写真左に、骨の突きだした脚を上げ、仰向けになったこの男性がいるが、やはりこの時点でも血は飛び散っていない。両脚の動脈が切れているにもかかわらずだ。ところが、その数十秒後に一般人が撮った写真では、一気に地面に血が飛び散っている」
わずかの間になぜこんな不可解なことが起きたのか。さらに、周囲の人たちはなぜ、脚を失った男性を全くケアしようとしないのか。彼はこう続けた。
「その理由はこう考えれば合点がいく。男性は爆破テロで両脚を失ったわけではなく、事件の象徴的な写真を撮らせるために、あらかじめ『用意』されていたのではないか、ということだ」
そう推測できる根拠が別の写真に写りこんでいると、A氏は指摘する。
「(写真の中で)左端で帽子をかぶり直しているのが、負傷した男性を運んでヒーローになるカウボーイだ。彼は爆発直後にもかかわらず、悠然としている。フェンスを壊す場面でも、手に持った星条旗を放そうとしていない。報道では『彼は急いで被害者救助に走った』とされたが、これを見ればそうでなかったことがわかる。つまり、彼も用意された人物である可能性があるということだ」
「偽装テロ」疑惑は、他の写真を見ることでいっそう深まる。
「この写真には、少なくとも7名のクラフト社(民間軍事会社)社員が写っており、彼らはボストン市警がマラソン開催に合わせて実施した『爆発物処理班のオペレーション訓練』の参加者として呼ばれたという。
しかし、不思議なのは、この訓練参加者に関する情報が錯綜していることだ。事件後、イスラエル警察から数名の捜査協力者が米国に派遣されたことが明らかになったが、私が把握している情報では、そもそもイスラエル警察を招聘したのは当日に『訓練』を行なっていたクラフト社であり、彼らは、テロのためではなく『訓練』のために、事件前から現場にいたはずだ」
A氏は、写真の中でクラフト社の社員が手にする黒い物体にも注目している。
「あれはガイガーカウンターで、爆発物処理班が訓練中に持っていても不思議はないが、改造して爆弾のリモコンとして使うこともできるはずだ」
さらにA氏は、現場の被害者のなかには顔を隠したり、帽子やサングラスを身につけている者が多いことにも注目し、こう指摘した。
「偽装工作が行なわれる場合には、『プレイヤー』と呼ばれる偽装民間人が配置される。つまり、現場にいたのは、偽装工作に加担したプレイヤーたちだったのではないか。私の周囲では、『今回は24人のプレイヤーを使ったらしい』という話が広まっている」
※週刊ポスト2013年5月31日号