にわかに巻き起こっている憲法改正論議。夏の参院選では大きな争点になると見られる。台湾出身で、2009年に日本国籍を取得した評論家・コメンテーターの金美齢さん(79才)はどう考えるのか。
「これまで日本人は独立自尊をまったく考えなかった。憲法改正の動きが出てきたのは、今のままではダメと目覚めた人が増えたからでしょう」(金さん・以下「」内同)
そもそも憲法は敗戦後、連合国総司令部(GHQ)の草案をもとに作られたもので、それを65年以上も改正しないのはおかしいと訴える。
「戦後の占領下において、戦勝国のアメリカから押しつけられたのが今の憲法です。それを神聖不可侵とする空気が現在まで続いたことが異常なのです。私はずっと改正すべきと思っています。
96条もそうです。価値観の多様化した民主主義国家において、衆参両院の3分の2を獲得するのはほぼ不可能であり、これでは永遠に改正できません。従って、96条を改正して両院の2分の1で発議できるようにするのは妥当な判断です。国会議員の過半数で発議し、後は国民投票の手続きを取ればいい。私は96条改正に賛成です」
そのうえで金さんが改正を考えているのが「前文」だ。そこにはこうある。
<日本国民は、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した>
平和を愛する諸外国を信じ日本も同じように平和をめざすという意味である。
「憲法制定時、アメリカは日本が軍事力を持てないように前文と9条を作りました。しかし、尖閣諸島の領有権を主張する中国は日本の領域まで軍艦を派遣し、核開発をめざす北朝鮮はミサイル実験を進めています。この状況を見れば、<諸外国が平和を愛する>と規定する前文はブラックユーモアとしか思えません。この憲法を変えるなというのは、あまりに無責任な人々です。平和憲法が唱えるように、“戦いを放棄すれば平和が保たれる”というのは独善的な誤りです。
日本の平和を守っているのは憲法ではなく、日米同盟を基軸とした自衛隊であり、在日米軍なのです。実際、中国の軍隊が尖閣諸島に乗り込んできたらどうするのか。北朝鮮が日本本土にミサイルを発射したらどうするのか。護憲派は『降参する』と言うのだろうけど、私は御免被りたい」
危機に対処するには、前文だけでなく9条も変える必要がある。すると日本が戦争に参加できるようになり、自分の息子を戦地に送る可能性もあるが、金さんは「場合によってはそれもやむなし」という意見だ。
「誰しも命は惜しいし、子供を戦場に送りたくない。でも、自分がそうしたくないから、“戦いを放棄すれば安全と平和が成り立つ”と考えるのはあまりにも単純すぎます。この世の中には戦わなければならないことがあります。戦いを拒否するなら、他国の植民地や属国になることを覚悟しないといけません」
※女性セブン2013年5月30日号