リストラ対象者を小さな部屋に押し込め、単純作業に従事させる「追い出し部屋」をはじめ、社員を嵌(ハ)める巧妙なリストラが横行している。
さらに手が込んでいるのが、「架空ヘッドハンティング」なる手口だ。印刷会社の営業部に務めていたS氏(52)の元に、ある日、人材紹介会社からメールが届いた。
「私を欲しがっている会社があるということだったので話だけでも聞いてみようと、人材紹介会社の人に会うことにしました。条件もよく何度も熱心にすすめられたので、思い切って転職を決意。ところが会社に退職願いを出した途端、その人材紹介会社と連絡が取れなくなってしまった」(S氏)
S氏をリストラしようとした会社が仕掛けたのだろうが証拠は一切なし。S氏は失業保険をもらいながら職を探す日々だ。
中小企業では、より乱暴な手段も横行している。
「組合の賃上げ闘争に嫌気がさした社長が、会社を倒産させた。しかしこれは見せかけで、社員を全員入れ換えたうえで新会社を発足させたんです。社員全員が路頭に迷う結果になってしまった。でも、“偽装倒産”を立証する証拠が乏しく、社員は泣き寝入りするしかありませんでした」(人事コンサルタント)
社員全員が心中こう呟いたに違いない。あぁ社長に嵌められた──。
※週刊ポスト2013年5月31日号