消費増税がいよいよ来春の4月に迫ってきた。安倍首相はこの4~6月のGDPを見て増税を実行するか最終判断するという。ただし、片腕の麻生副総理は4月20日、アメリカで「予定通りに(消費税率を)引き上げる」と明言するなど、増税に前のめりだ。
アベノミクスでの好景気が喧伝されるが、現状では恩恵を受けているのは株や不動産などの資産を持つ一部の富裕層だけ。政権内で既定路線になっている増税は、投資に縁のない庶民の生活を直撃することは間違いない。
だが、そもそもなぜ増税が必要だったのかを思い出してほしい。政府によると、増えた税収分はすべて「年金や医療費などの社会保障費の財源にあてる」と説明されている。政府は税率1%当たりで2.7兆円、5%で13.5兆円の増収を見込み、そのうち年金財源には合計3.5兆円をあてると計画している。
先日、麻生太郎・副総理は「アベノミクスで年金運用はウン兆円の黒字だ」と大威張りだった。少なくとも3.5兆円程度は稼ぎ出しているのだろう。ならば、年金財源にあてる分の消費増税はまったく不要ではないか。
安倍首相の経済・財政政策のブレーンとして知られる嘉悦大学教授の高橋洋一氏もこう指摘する。
「財政再建に何よりも必要なのは、経済成長による税収増です。増税はその経済成長の腰を折ってしまいかねない。
たとえば、金融緩和策によって景気回復が進んでいたイギリスでは、2011年1月に2.5%の消費増税が行なわれたことによって成長が鈍化した。現在、日本では幸いにもアベノミクスで景気が上向いているので、増税は延期して様子を見たほうがいい。
今後、日本経済の名目成長率が4、5%程度を維持し続ければ、増税なしでも財政再建は十分に可能です。その成長率に達成できるかどうか見定めるのに、おおよそ2年かかる。その間に増税して成長を止めてしまうことは本末転倒です。だから私は、消費増税は2年は待たなければならないといっているのです」
※週刊ポスト2013年6月7日号