600万人とも1000万人とも言われる中国の公務員。その1割以上にあたる高級官僚たちが、真っ先に逃亡の準備を始めている。拓殖大学海外事情研究所付属華僑研究センター長の澁谷司氏が解説する。
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中国共産党幹部や政府高官が海外逃亡を企てるケースが近年増えている。明らかになったものだけでも、例えば2009年、広東省中国人民政治協商会議主席(当時)の陳紹基が腐敗などの党紀違反に問われ、役職も党籍も剥奪された後、関係の深かった高官約150世帯が海外へ逃亡したと言われている。
少し遡るが、2003年には当時、浙江省温州市副市長だった楊秀珠が娘や娘婿らと上海空港を飛び立ち、シンガポール経由でアメリカへ逃亡した。楊は約2億5000万元(約40億円)にものぼる収賄の疑いをかけられていた。2005年にオランダで拘束された楊は、その後中国側に引き渡された。
中国社会科学院の研究によると、海外に逃亡した中国高官の数は1990年代以降、1万6000~1万8000人にのぼる。中国の統計は正確ではないため、この数字も根拠ははっきりしないが、実際の逃亡人数はもっと多いと私はみている。さらに言えば、これから逃亡する高級官僚はどんどん増えるだろう。
※SAPIO2013年6月号