ビジネス

「衣・食・住」のすべてが値上げへ 「隠れ値上げ」も進行中

 日経平均株価が、5月23日1143円の暴落を演じたが、それとともに“安倍バブル”が早くも弾けた。「円安・株高で企業の業績が回復し、次にサラリーマンの給料が上がる」というアベノミクスに期待した国民の前に、いま、厳しい現実が待ち受けている。

 この夏、電気・ガスなど公共料金から食品、外食産業、靴や鞄、家具にトイレットペーパーまで、これでもかと「衣・食・住」すべてが大幅値上げされる。いずれも円安による原材料費、燃料費、飼料代や物流コストの上昇が原因で、国民には賃上げの恩恵がないのに、アベノミクスの副作用だけが回ってきたのだ。

 まず「食」では、小麦粉や植物油などの輸入価格高騰の影響が大きい。7月1日には山崎製パンが食パン「芳醇」や「高級つぶあんぱん」など15品目を2~6%値上げし、日清製粉も「マ・マー パスタソース」のうち10品目を9~11%値上げ、味の素は8月1日出荷分から家庭用マヨネーズを6%上げる。

 水産加工品も上がる。世界的な鰹の不漁と漁船用燃料重油の値上がりなどで、水揚げしてすぐに瞬間冷凍される加工用冷凍鰹の価格は1年前の2倍に急騰。そのため、はごろもフーズは5月からツナ缶「シーチキンL」を330円から345円に引き上げ、鰹節大手のマルトモは、6月から「削りぶし」「花かつお」などの商品を10~20%値上げする。

 値上げの波は低価格競争をしてきた外食産業にも及んでいる。マクドナルドはこの5月7日から「100円マック」を120円、チーズバーガーを120円から150円へと2割以上引き上げた。回転寿司チェーンのかっぱ寿司はこの夏をメドに1皿94円から105円に価格を改定している。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は、今後、値上げはもっと増えると指摘する。

「穀物の国際相場は昨年から上昇していたが、これまでは円高で国内価格の上昇が抑えられていた。それが円安に転じたことでダブルパンチになった。たとえば、政府が全量買い取って企業に販売する輸入小麦の価格は4月に9.7%引き上げられた。

 在庫があるメーカーは、今は値上げを我慢していても、いずれ価格転嫁しなければやっていけない。パンの他に、うどんやパスタなど麺類の価格は上がるでしょう。また、穀物が高いと飼料代が上がり、食肉の価格にもはねかえります」

 値上げは目に見えるものだけではない。価格据え置きで内容量を減らす「隠れ値上げ」もひそかに進行しているのだ。

 ソーセージなどの食肉加工品は、一見、価格が据え置かれているように見える。だが、値札だけで「値上げしてないわ。よかった」と安心するのは早い。袋の中身をよ~く見たほうがいい。

 日本ハムは7月からハム、ソーセージなど89品目で容量を減らし、主力のあらびきウィンナー「シャウエッセン」は1袋138グラムから127グラムになる。本数は変わらず1本ごとのサイズを小さくするため買う人は気づきにくいが、シャウエッセンは通常、スーパーでは2袋セットで売られるため、実際には同じ値段で22グラムも減ることになる。

 食肉加工品以外でも、同社は、冷凍食品を「隠れ値上げ」。「酢豚」は245グラムが230グラムに、「プレミアムハンバーグ」は180グラムが166グラムに減量する。

 日本ハムは、「主原料の豚肉などの輸入原材料価格の高騰が主たる原因だが、円安や燃料費高騰、包装資材の価格上昇など、ここにきていろいろな要因が重なって、企業努力で据え置いてきたのが厳しくなってしまった。出荷価格を上げてしまうと小売店が受け入れにくくなってしまうことを考慮し、価格を据え置いたままで容量を減らす商品規格変更をすることになった」(広報IR部)と説明する。

※週刊ポスト2013年6月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
電話番号が「非表示」や海外からであれば警戒するが(写真提供/イメージマート)
着信表示に実在の警察署番号が出る特殊詐欺が急増 今後危惧されるAIを活用した巧妙な「なりすまし」の出現
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
堀田陸容疑者(写真提供/うさぎ写真家uta)
《ウサギの島・虐殺公判》口に約7cmのハサミを挿入、「ポキ」と骨が折れる音も…25歳・虐待男のスマホに残っていた「残忍すぎる動画の中身」
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
MajiでFukkiする5秒前(時事通信フォト)
2年ぶり地上波登場の広末涼子、女優復帰は「過激ドラマ」か 制作サイドも“いまの彼女ならなら受けるのでは”と期待、“演じることにかつてなく貪欲になっている”の声も
週刊ポスト
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
YouTubeでも人気を集めるトレバー・バウアー
【インタビュー】横浜DeNAベイスターズ、トレバー・バウアー「100マイルを投げて沢村賞を獲る」「YouTubeは第2の人生に向けての土台作り」
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン
公開された中国「無印良品」の広告では金城武の近影が(Weiboより)
《金城武が4年ぶりに近影公開》白Tに青シャツ姿の佇まいに「まったく老けていない…」と中華圏のメディアで反響
NEWSポストセブン
女子ゴルフ界をざわつかせる不倫問題(写真:イメージマート)
“トリプルボギー不倫”で揺れる女子ゴルフ界で新たな不倫騒動 若手女子プロがプロアマで知り合った男性と不倫、損害賠償を支払わずトラブルに 「主催者推薦」でのツアー出場を問題視する声も
週刊ポスト
すき家の「クチコミ」が騒動に(時事通信、提供元はゼンショーホールディングス)
【“ネズミ味噌汁”問題】すき家が「2か月間公表しなかった理由」を正式回答 クルーは「“混入”ニュースで初めて知った」
NEWSポストセブン