米女優アンジェリーナ・ジョリー(37)の乳房切除によって注目を浴びた遺伝子検査だが、遺伝子が教えてくれるのは病気だけではない。
老化の進行を制御しているのも遺伝子であり、その働きを調べれば、自分の寿命さえもわかってしまうのである。
ヒトの染色体の末端部分には細胞分裂のたびに少しずつ短くなる〈テロメア〉という構造がある。テロメアが完全に消滅すると細胞分裂が止まり、老化が進行する。このテロメアの消滅を抑える遺伝子が、サーチュイン遺伝子である。
動物実験では、サーチュイン遺伝子の働きを強めることによって、老化が遅れて寿命が20~30%延びることも確認されている。つまり、寿命が20年延びる可能性もあるということ。人間に応用すれば、平均寿命が100歳を超える可能性もあるといわれている。
『ボケない道「100歳まで現役バリバリ」を目指す技術』(小学館101新書)の著者で、順天堂大学大学院医学研究科教授の白澤卓二氏がいう。
「サーチュイン遺伝子の発現量が多いほど、炭水化物や脂肪の代謝が上がり、インスリンの働きも良くなり、さらに血管のアンチエイジング効果もあることがわかっています。病気はもちろん、体の内外の老化を防ぐことから“長寿遺伝子”ともいわれているのです」
その遺伝子の発現量は血液から測定することが可能だ。神奈川・川崎市にある「ふるたクリニック」では25mlの血液さえあれば、約1か月後に診断結果が出る。費用は7万円だ。
「検査機関によりサーチュイン遺伝子の発現量=活性度が数値化(およそ120が最高値)されて出てきます。30点以下ならば、サーチュインはオフ状態で、平均寿命まで生きるのは難しい状態。活性度が80点以上なら寿命を延ばせる状態といえます」(古田一徳院長)
長寿の秘訣はいかにテロメアを短くしないかだが、そのカギとなるサーチュイン遺伝子の発現量は自分で調整可能だ。前出の白澤氏がいう。
「サーチュインは摂取カロリーを30%抑えることで、発現量が増えることがわかっています。とくに糖質摂取を抑えると効果的なので、炭水化物を減らすのが望ましい。
そして運動をすること。デスクワークオンリーの人と、適度に運動している人では、サーチュインはかなりの差です。その他、赤ワインに多く含まれるレスベラトロールという植物成分がサーチュインを活性化させるといわれています」
適度な運動と腹八分目の食事に赤ワイン──これが長寿のライフスタイルだ。
※週刊ポスト2013年6月14日号