女性社員の積極活用、役員への登用を自ら公表する企業が増えた。それもそのはず。安倍政権は成長戦略の柱として、「2020年までに30%(指導的地位に女性が占める割合)」、「上場企業は女性役員を1人以上置く」など具体的な目標数値を定め、優遇措置もチラつかせているからだ。
また、東京証券取引所は、三井住友フィナンシャルグループ、日産自動車、花王、ニコンなど女性活用の先行企業17社を“なでしこ銘柄”として選定。個人投資家を市場に呼び込むプロジェクトの一環として今後も続けていく方針だという。
株式市場の評価まで左右されるとあっては、いつまでも男性優位の人事システムを続けるわけにもいかない。女性管理職を増やすと“公約”している主な企業は以下の通りだ。
【リクルートホールディングス】
全グループ執行役員に占める女性比率を2015年4月までに10%にする
【イオン】
管理職に占める女性比率を2020年をめどに50%に引き上げる
【日立製作所】
2020年度までに国内の女性管理職を1000人(現在の2.5倍)に増やす
【大塚製薬】
2020年までに50%をめどに女性役員を登用する
【東芝】
課長以上の管理職に占める女性比率を2015年に5%(100人増)に引き上げる
もちろん、それぞれの分野に精通し、リーダーシップの発揮できるキャリアウーマンが続々と管理職に出世していくことに異論を挟む余地はない。何しろ日本企業において、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は6.8%(2011年厚生労働省調査)しかない。軒並み30%を超える欧米諸国に比べれば、日本の女性社員の能力は世界的に見ても極端に低く扱われているといっていいからだ。
ところが、日本企業には仕事のキャリアだけでは計れない管理職の“物差し”がある。同志社大学政策学部教授(専攻は組織論)の太田肇氏が語る。
「欧米のように『役割としての管理職』という考え方が徹底されていれば問題ないのですが、日本では上司と部下の間には人格的な関係が持ち込まれます。仕事を進めるうえでも、表に出せないホンネの人間関係や意思疎通が重要な意味を持つのです」
太田氏はホンネの意思疎通を行う手段として「共感」や「ノミニケーション(飲み会)」を挙げる。しかし、女性の管理職の場合は男性ほどノミニケーションを図りにくく、「男性の部下との間で以心伝心が通じないおそれが生じる」と指摘する。
大手電機メーカーの40代課長は、こんなホンネを打ち明ける。
「時代にそぐわないと怒られそうですが、女性はどうしても仕事だけでなく、育児や家事との両立で忙しく、取引先との酒の席や休日のゴルフ接待など出られない場合が多い。また、ガツガツと仕事を取って出世レースを勝ち抜きたいという貪欲さが男性ほどない。このまま時代の流れとばかり女性の管理職が増えて、会社の士気が低下しないか心配です」
感受性の強い女性ならではのデメリットを挙げる社員もいる。
「ウチの女性上司は、気分次第で指示の内容がころころ変わるうえ、自分の考えに共感して欲しいという意識が強すぎるため、少しでも反対意見をいう部下がいたら、『そんなことは聞いてない!』と露骨に不機嫌になるんです」(食品メーカーの30代係長)
さらに、前出の太田氏はこんな懸念を抱く。
「女性の部下に対しては同性ということで厳しく接し、パワハラが増える危険性があります。男性の管理職が女性の部下に対してかなり気を遣って接しているのとは対照的。冷静なコミュニケーションや的確な判断能力に欠ける女性は管理職には向かないのかもしれませんね」
女性管理職の台頭を阻まないためには、占有率のアップよりも先に社内のサポート体制を含めた企業風土の改革が求められているのではなかろうか。