安倍首相は今年の春闘にあたって財界に賃上げを要請した。大手企業の労使交渉がスタートした3月には、賃上げやボーナスアップを決めた一部の企業が大きく報じられ、あたかも「賃上げ時代」が到来したかのように宣伝された。首相は5月17日の講演で、
「今年の春闘では、たくさんの企業がよく応えてくださったと思います。報酬が上がることは、消費を拡大し、景気を上昇させて、企業にもメリットがあります」──そう成果を強調した。では、春闘の結果、給料はいくら上がったのか。
連合が5月末に発表した春闘結果(第6回集計)によると、平均賃上げ額は前年比で「月額24円」のマイナス、非正規労働者の時給引き上げ額も前年比マイナスだ。連合総合労働局は、〈労使で真摯な議論を重ねてきたが、十分な回答を引き出し得たとは言えない〉と総括している。
安倍首相の掛け声は空振りに終わったのである。
首相官邸のホームページには、賃上げ騒動の残滓が残っている。官邸は安倍首相の要請に応じて賃金アップを決めた企業を“表彰”するかのように、ホームページで企業名と賃上げ内容を順次公表してきたが、3月11日のニトリを最後に更新はなく、賃上げ企業数はわずか8社で止まっている。これが安倍首相のいう「たくさんの企業」の実数だ。
※週刊ポスト2013年6月21日号