西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、ペット本の選び方について解説する。
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いやぁ驚き。先日ホームセンターのペット売場にいったら、書籍もたくさん置いてあって、今や間違いとされてる古~い考えに基づく本までもが、まだ売られてた。
その古~い考えってのは、「犬を甘やかして育てると、飼い主よりもエライと勘違いする」ってやつ。そんで、飼い主よりもエライと勘違いして起きる諸々の問題を権勢症候群とか、αシンドロームなんて紹介してて、しかも必ずと言っていいほど、その予防策ってのもそうした本には記されてる。
いけないことをしたら、首根っこをつかんで持ち上げて叱れ、仰向けに押さえつけて叱れ。号令は威厳を持って発しろ。食事は必ず飼い主の後、一緒に寝てはいけない、扉の出入りは飼い主が先、通り道に犬がいたらよけずにどけろ。
そもそもこうした考えは、犬はオオカミと同じという仮説が出発点。でも、2000年以降、DNA的にいろんなことがわかって、犬はオオカミを確かに祖先にしてはいるけど、もはやオオカミとイコールではない、ってぇこと。
群れに関して言えば、家族単位てぇこともわかってる。すなわち、ボスがいて群れを統一・維持してる、ってなわけじゃない。
問題なのは、これらを信じて本のとおりにやると、噛みつかれる、って危険が伴うってぇこと。
支配する、服従させる存在、番犬主体の犬の飼い方ならいざ知らず、仲良く暮らす存在として犬を位置づけてる、現代の犬においては、百害あって一利無しの考え。
じゃぁどんな本を選べばいいのか。それはですね、少なくとも2006年以降の初版のものを選ぶこと(冒頭の本は1998年が初版なんですな)。
それ以前の本は、スポーツの本なら、運動中は水飲むな、足腰を鍛えるのならうさぎ跳びが一番、なんてことが書かれている、そんな本みたいなモンですからね。
※週刊ポスト2013年6月21日号