開幕から2か月以上を過ぎたのに、DeNAの元気印が二軍でくすぶっている。日本ハム時代、新庄剛志とともにパフォーマンスでスタンドを盛り上げてきた森本稀哲(32)だ。今季、モーガン、多村仁志の加入などで、外野陣の競争が激化。いまだに一軍昇格を果たせずにいる。
「ベテランの金城龍彦が好調で、2008年ドラフト1位の松本啓二郎も尻に火がつき、結果を残し始めた。右の代打はラミレスが控えているし、先日スタメンで猛打賞を記録した宮﨑敏郎もいる。昨年までムードメーカーを務めていたが、今年はモーガンが森本の役割を担っている。今のままでは、なかなか昇格は厳しいでしょう」(スポーツライター)
最近は二軍でもスタメンに名を連ねる機会もなくなり、試合終盤での代打出場が主だ。
「それでも明るさを失っていないのは、さすがだと思います。ベンチでいちばん声を出しているのは森本です。相手チームで新人選手が打席に立てば、甲高い声で『ルーキーボーイ!』と英語っぽく発音して野次る。俊足の打者が打席に入ると、ベンチから『サード行くぞ、サード!』と悩める大砲・筒香嘉智に声を掛け、その直後、本当に打者が三塁側にセーフティバントをしたこともあった。
森本ほどの実績のある選手が、ずっと二軍で、なかなか昇格の見込みがないとなれば、腐ってもおかしくない。ファンがカメラを向ければピースサインをするし、『めちゃめちゃ焼けてますね』と声を掛けられても、ニッコリと笑い、親指を立てる。
野球選手にとって、日に焼けているのはファーム生活が長い証拠だから、あまり嬉しくないはず。それでも、イヤな顔1つせず、逆にお客さんを笑わせる。なかなかできることじゃないと思います」(同前)
DeNAの中畑清監督は、巨人での現役最終年、レギュラーを奪われ、ベンチを温める機会が多くなった。腐りそうな状況に置かれながらも、誰よりも声を出し、明るさを失わずに、チームを盛り上げた。それを見ていた巨人・藤田元司監督(当時)は、「中畑には本当に頭が上がらない」と絶賛していた。
森本は二軍のベンチでも、これまでと変わらない態度でチームを鼓舞している。その姿は、往年の中畑監督とどことなくかぶって見える。