一向に減らない万引きに、大阪の鮮魚店が強硬手段に出た。万引き犯の顔写真を店先に張り出したのだ。この行為に賛否両論巻き起こっているが、ここまでしなくてはならない背景には、巧妙化かつ悪質化する万引きの実態があった。
警察庁によると、万引きの認知件数はこの十数年高止まりを続け、2012年は約13万5000件。「最近の万引きは巧妙化しているので防ぐのが難しい」と言うのは、万引き防止のため私服の保安警備員を派遣する日本警備通信の石原知典・保安警備部課長だ。
「若い世代は携帯電話で撮った写メをやりとりし、『あいつが私服警備員だ』と情報を共有して万引きするので見つけるのが困難。現行犯で捕まえても、そうした子供の親の中には、『子供がゲームを盗むのはお宅の警備がしっかりしていないからだ』と被害者は自分たちだと言わんばかりのかたもいます。自分の子供が悪いことをしている自覚がないんです。
最近は大型ショッピングセンターで客が米や酒を持ったまま店を出て、駐車場まで行っても、『車に財布を忘れたから取りにいった』と言い逃れされます。万引きを防ぐのは年々難しくなっています」
NPO全国万引犯罪防止機構(万防機構)がまとめた2011年度の「全国小売業万引被害実態調査」には小売店が被った悪質な被害例が並ぶ。
●万引き犯を深追いし、店員が刺された。
●成人による万引きが非常に多く、悪いことをしている意識は全くなく、捕捉することで逆ギレされる。
●防犯ゲートの電源を抜き、鳴らないようにし、持ち去られた。
店側も、もちろん万引き犯に対し手をこまねいていたわけではない。店員による声かけや警備員の増員など対応に追われてきた。だが、そうした自衛策にも限界がある。業を煮やし、大阪の鮮魚店のように強硬策に打って出た店は過去にも存在した。
1994年、群馬県高崎市のディスカウント店がやはり、万引き犯の写真を店内に掲示したことがある。その時は、前橋地方法務局が「人権への配慮を欠く」と中止を申し入れ、やめざるを得なくなった。
犯罪防止と人権擁護の両立は難しく、時折生じる見せしめ的な刑罰は全国的な万引き防止に結びついていないのが現状なのだ。
※女性セブン2013年6月27日号