自民勝利、民主衰退が確実視されるなか、失速気味の第三極。参院選後の政局はどう動くのか。ジャーナリスト・武冨薫氏が指摘する。
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維新が連立相手として消えるなかで、かわって安倍政権のパートナーに浮上しているのが民主党の改憲派だ。
民主党退潮は覆いがたく、参院選でも改選43議席を半減させる大敗に追い込まれる可能性が高い。左派の海江田万里・代表は、「代表にしがみつく気は毛頭ない。刀折れ矢尽きたと思った時は潔く代表を辞める」と負ければ辞任を宣言しており、党内では参院選後、海江田辞任→代表選の流れは既定路線と見られている。
その代表選を機に、民主党内は左右が対立し、分裂含みの展開が予想される。キーマンは前原誠司・元外相だ。民主党の保守派中堅議員は、代表選をにらんだ駆け引きはすでに始まっていると語る。
「前原さんは代表選出馬を狙っている。もともと9条改正が持論の前原さんが96条改正に慎重な発言をしているのも党内の幅広い支持を得るためだ。まずは党執行部の人事権と金庫を握ったうえで、自治労や日教組系の左派を追い出し、民主党を保守政党へと衣替えさせることを志向している」
しかし、現実には前原氏の代表就任は容易ではない。左派は代表選が左右激突になることを恐れ、人気のある細野豪志・幹事長を話し合いで代表に選出して保守派の動きを抑え込むつもりだ。
「そうなると前原さんに勝ち目はない。将来も出番はなくなるから、改憲派を率いて党を割り、維新やみんなとの野党再編に動くことになるだろう」(同前)
「前原新党」旗揚げである。その中核になるとみられているのが、「改憲4人組」と呼ばれる前出の渡辺周氏、長島昭久氏、笠浩史氏、鷲尾英一郎氏で、いずれも96条改正議連の役員を務めている。参院民主党には改憲に慎重な労組出身者が多いとはいえ、野田グループ、前原グループ、旧羽田グループなどの参院議員には改憲に前向きな保守派が約20人いる。
前原新党がそうした勢力を吸収できれば、憲法改正の3分の2の勢力確保のキャスティングボートを握ることができる。たそがれの民主だが、これまで積み上げてきた勢力はすぐにはなくならない。“腐っても民主”というわけだ。
安倍首相が待っているのはその民主党分裂だ。 前原氏は超党派の安保議連で以前から安倍首相とパイプがあり、5月の大型連休には、改憲4人組の1人、長島氏とともに自民党や維新との超党派議員団で英国を訪問した。官邸が狙いを定めたのは前原側近の4人組の中で96条議連の会長代理に就任した渡辺氏だった。
「渡辺氏は官邸で開かれている与野党の拉致問題対策協議会メンバーで、民主党内で一貫して外国人参政権に反対してきたことから、安倍総理もその姿勢を高く評価している。渡辺氏主導で民主、維新、みんなの96条研究会ができたのも官邸の後押しがあった」(安倍側近議員)という。
安倍首相は早くから、“橋下がこけたら民主分裂で前原と組む”という二の矢を用意していたのである。
※SAPIO2013年7月号