6月7日、ビックカメラ赤坂見附店がオープンした。山手線内では沿線以外で初の家電量販店の出店で、大きな話題になった。
そのオープンセールでは、〈100台限定! 定価5万9800円のiPad(32GB)が2万9800円〉、〈お一人様1台限り 東芝製の最新ノートパソコンが3万9800円〉などと激安商品が目白押しで、早朝から約600人もの人が行列を作った。
出勤途中のビジネスマンたちが、何やらいぶかしげな表情で列に目を向けていたが、それは行列の長さではなく、並んでいた人たちに向けられたものだった。彼らの姿が、都心のビジネス街である赤坂ではあまりに“浮いて”いたからだ。
「昨日ノ夜12時カラ並ンデマスヨ」
そう片言の日本語で話すのは先頭集団にいた中国人女性。彼女に続くのは、仕事終わりで並んだのか、コックの白衣姿の中国人男性の集団。さらにその後ろに目をやると、やはり若い中国人、そして真っ黒な顔に汚れたジャンパー姿のホームレス風の男性たち。行列の3分の2以上、400人以上は彼らで構成されているように見えた。
実は、家電量販店のセール時には、もはやお馴染みの光景といっていい。店員も慣れた様子で誘導し、開店直後、限定のセール品が、次々と彼らの手にわたっていった。
ある家電量販店の店長が明かす。
「彼らの元締めの目的は転売です。オープンセールで激安商品を買って、それをネットなどで定価に近い金額で転売し、利ざやを得ている。大きく分けて、中国人グループとホームレスグループがある。彼らは元締めから集団で投入されているので、『お一人様1点限り』の制限を設けても無意味なんです」
本誌記者はiPadや最新のブルーレイレコーダーを買った中国人たちの後についていった。すると、ぞろぞろと近くの広場に集合。そして、一人の男性に商品を手渡し、代わりに数千円の「バイト代」を受け取っていたのである。
彼らが買った激安商品は、車のトランクに押し込められどこかへ運ばれていった。
「買った人がホームレスなら国内で転売されるだろうし、中国人なら転売先が海外ということもある。私たちの業界では、彼らを『転売』と『バイヤー(買い手)』をかけた“転売ヤー”と呼んでいます。ここ数年、彼らのおかげでお得なセール品が一般の人にほとんど渡らない状態が続いています」(同前)
※週刊ポスト2013年6月28日号