一向に減らない万引きに、大阪の鮮魚店が強硬手段に出た。万引き犯の顔写真を店先に貼り出したのだ。
「私は万引きをしました」
ぐっとカメラをにらむ初老の男性や野球帽を被った硬い表情の中年男性など計8枚の写真がレジ背面や店外の壁に貼られている。罰金1万円を支払わなければ顔写真が公開されるのだ。インターネット上では賛否両論が渦巻き、議論は白熱するばかり。
万引き被害の理不尽さを訴える声も多い。コラムニストの石原壮一郎さんの実家は食料品や酒などを扱う小さな商店だった。それだけに「万引きに対する憎悪は人一倍強い」と力説する。
「実家でも被害はありました。10円のお菓子を万引きされたら、その損失を補うために、店はその10倍売らないといけない。お店は命懸けで商売をしていますが、万引き犯にそこまでの覚悟があるのでしょうか。軽い気持ちで『刺身のサクを一本盗っただけじゃないか』と開き直られると、甘えるのもいい加減にしろと思います」
万引き犯に積年の恨みを持つ石原さんが続ける。
「大阪の鮮魚店の貼り紙は一般のお客さんに圧迫感を与え、万引きが減っても客足が途絶えるかもしれない。そうしたリスクや批判を覚悟のうえで強硬策に出ているのですから、外野があれこれ言うべきではない」
実際、万引き被害により会社の命運を断たれる“万引き倒産”という言葉もあるほど店側の被害は深刻だ。万防機構の福井昂事務局長が言う。
「警察庁の推計によると、2009年の小売業事業所における万引き被害総額は4615億円。1日あたり12.6億円という莫大な被害額です」
何より問題なのは万引き犯が一向に減らないことだ。ジャーナリストの大宅映子さんは今回の一件の背景に“やさしさごっこ”が蔓延する時代を見てとる。
「昔はお節介な人がいて『悪いことは悪い』と指摘しましたが、今は他人への干渉や叱咤を必要以上に避ける“歪んだやさしさ”が世の中に広がり、社会のモラルを低下させています。『一度くらいなら見逃してやろう』と世の中が許してきたことが万引きの温床となっているのです。
万引きは犯罪であり、悪いことだと徹底して世の中に訴える必要があります。少しやりすぎの面もありますが、その意味で今回の鮮魚店はいい問題提起をしたと思いますよ」
※女性セブン2013年6月27日号