5月27日、東京・JR四ツ谷駅の中央線上りホームで発生した事故。転落した小学5年生の男子児童は、歩きながらケータイをいじっていたとされる。
“歩きケータイ”の人が陥る危険は、転落だけではない。ケータイを見るのに夢中で、他人にぶつかる人も急増している。
「特に最近、ガラケーよりスマホを持っている人とよくぶつかる気がします。しかも、“歩きスマホ”の人は、すごい勢いでぶつかってくるので、怖いんです」(49才・主婦)
女性セブンが40代以上の女性100人に行ったアンケートでも、歩きスマホの歩行者にぶつかった・ぶつかりそうになった経験を持つ人は41%とかなり多かった。
交通工学を専門としている愛知工科大学教授の小塚一宏さんは、こんな実験を行った。スマホを持った学生に、駅のホームをツイッターをしながら歩かせたのだ。すると学生は、すぐ横を通る子供にもまったく気づいていないことがわかった。
「たいていの人は、歩きスマホをしていても、“自分は周りがある程度見えている”と思っています。でも、視界に人の姿が入ってきても気づかない。実際に脳が認識しているのは、じっと見ているスマホ画面から、せいぜい20cm程度の範囲なのです」(小塚さん)
歩きながらケータイを見る人は、ガラケーのときからいた。なぜ“歩きスマホ”のほうが危ないのだろうか。
「スマホのほうが、より、脳が認識する視野が狭まるからです。画面の大きいスマホは文字などの情報量が多く、さらに、SNSや地図などのアプリも多彩。特にFacebookやツイッターなどSNSを絶えずやる人が増え、更新される情報を“歩行中も見たい”と思うことから、周囲への注意が散漫になるんです」(小塚さん)
また、認知科学を専門とする首都大学東京准教授の樋口貴広さんは、次のような実験を行った。通路上にスライド式に開閉するドアを設置し、ドアの開閉スピードを変えて、歩行者がこのドアを通り抜けられるかどうかを観察した。すると、“歩きスマホ”の歩行者は、ドアがゆっくり開閉しているときほど、ぶつかりやすいという結果が出た。
「手ぶらで歩いている人の場合、当然ですがゆっくり開閉するドアのほうが通り抜けやすい。しかし歩きスマホでは逆だった。ゆっくり開閉するドアのスピードは、50cm/秒ですが、これは足の不自由な高齢者が歩く速度とほぼ同じなんです。
歩きスマホをしているときは、ゆっくり動くものを認識する度合いが低くなるといえます。つまり歩きスマホの歩行者が増えると、お年寄りや足の不自由なかたが怪我をする確率も高まる心配があるのです」(樋口さん)
※女性セブン2013年7月4日号