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話し方マニュアル本大ヒットの陰に「しゃべらぬ若者」の存在

 飲みの誘いも断わり、定時に帰宅するプライベート重視の部下も珍しくなくなった。まァ、それはしかたない。しかし最近、さらなる“新人類”が登場した。上司や先輩とは世間話すらせず、中には取引先の相手を前にしても無言を貫くという、唖然とさせられる若手社員が増えているのである。

 書店のビジネス本のコーナーでは、「話し方マニュアル本」が次々とベストセラーになっている。
 
 明治大・齋藤孝教授の『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)は累計33万部を突破。2009年7月に発売され、話し方マニュアル本ブームの火付け役といわれる『誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方66のルール』(野口敏著・すばる舎)は、80万部を超えた。
 
 こうした会話指南本が飛ぶように売れる背景には、単なる口下手を超越し、職場で業務以外は“な~んにもしゃべらない若者”の存在がある。
 
 都内の中堅商社に勤めるAさんは、顧客応対の途中、急用の電話が入ったため、部下に任せて席を外した。だが、約10分後に戻ってきた時、その場の光景に思わず青ざめた。

「テーブルを挟んで2人とも黙ったままなんです。クライアントさんは気まずそうに湯呑みを見つめていました。後から聞くと、私が中座している間、一言も会話がなかったらしい。雑談くらいして場を繋ぐのが、当たり前だと思うんですが……」(Aさん)
 
 大手製造機器メーカー勤務のBさんも、接待での部下の態度にブチ切れた。
 
「私1人がお客さんとしゃべりっぱなしで、アイツは黙って飲んでいるだけ。口を開くのは、“お飲み物の追加はいかがですか”くらい。“お前は店員かッ!”と突っ込んでも無反応。あれなら、いない方がマシです」
 
 程度の差こそあれ、「こんな若手、ウチの職場にもいる!」と感じる人は多いのでは。実は全国的に、こうした「しゃべらない」若手社員が急増している。
 
 もちろん口がきけないわけではない。聞かれたことには答えるし、勤務態度はいたって真面目。仕事はそれなりにできる。
 
 だが、雑談や世間話に興じないので、どんな奴なのかがまったくわからない。趣味や嗜好はもちろん、休みの日の生活など到底想像できない。そんな部下にどうアプローチすればいいのか、世の管理職は頭を悩ませている。
 
 都内の重機販売会社の営業マンCさんは、部下との現場までの往復1時間をこう振り返る。
 
「仕事の段取りを確認し終えたら、後はタクシーの中で果てしない沈黙が続きました。“どこのファン?”と野球ネタを振ろうとしたが、“ボク、とくにそういうのないんです”とポツリ。結局、会話はそこで終了。その後はスマホをいじってやり過ごしました。その間アイツはボーッと外の景色をながめていた(笑い)」

※週刊ポスト2013年6月28日号

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