子供が働かない、働けないまま定年退職を迎え、自分が働けなくなる日が近づくにつれ、親は子供たちに働いてほしいとさまざまに働きかけようとする。だが、かえって子供を追い詰めることになったり、気持ちが焦るばかりで何もできないことが少なくない。
では、現状を少しでも改善していくにはどうすればいいのか。
『「親活」の非ススメ』(徳間書店)などの著者で、若者の就職事情に詳しい法政大学キャリアデザイン学部教授の児美川孝一郎氏の話。
「非難するような言葉や、『同級生の○○君は……』とか『隣の家の△△ちゃんは……』というような、他人と比較する言葉は禁物です。一度挫折を経験した人は、安心できる基地のような場所を欲している。家庭でも責められたり、他人と比較されたりすると、基地を失って精神状態が悪化し、引きこもりになってしまう可能性もあるからです」
親を対象に就職支援の説明会を行なっているNPO法人「育て上げ」ネットの就労支援担当課長・工藤彰子氏もこう注意を促す。
「『親はいつか歳を取って死ぬんだぞ』とか『30歳を過ぎたらどこも正社員として雇ってくれないぞ』といった正論をいわないこと。子供はそのことを理解していても、面と向かって正論をいわれたら返す言葉がありません。反発したり、逆に殻に閉じこもってしまう恐れがあります」
また、「お前はこれからどうするつもりだ」といった、今の本人には答えようもない質問もタブーだ。
そのうえで工藤氏はこう進言する。
「30代で働けていない場合、かなり煮詰まった状況にある可能性が高い。本人任せにしているのでは、ずるずると引き延ばしになってしまいます。そこで親がすべきことは、第三者に状況を話して分析してもらい、どうやって子供の背中を押すのがベストなのかを考えること。
『育て上げ』ネットに来るのは母親が多いのですが、父親の協力も必要です。サポートプログラムや職業訓練などのプログラムにはある程度のお金がかかるので、できれば定年前の金銭的に余裕があるうちに、相談に来られるほうが良いでしょう」
※週刊ポスト2013年6月28日号