超高層ビルが高さを競うように林立する東京・赤坂。変容する街を空から眺めると、ビルの狭間に異彩を放つ2階建ての白亜の豪邸が現われる。駐日アメリカ大使の公邸である。その上に見えるビルがアメリカ大使館、そこから500mほどの場所に、公邸同様、広大な敷地に緑が広がる大使館の職員宿舎がある。
戦後、表と裏の舞台から日本の政財界に大きな影響を及ぼしてきたアメリカ大使館だが、その内側は非公開の部分が多い。防衛上の理由から、その高さや階数すら明かされていないのだが、内部の通路は迷路のように張り巡らされていて、窓には2重の防弾ガラス、また諜報活動の拠点として電波傍受機や電波遮断室が備えられているという。
一方、美しい噴水やプールのある公邸。そこを訪れた人の話によると、広いホールにはグランドピアノや暖炉が備えられ、絵画や彫刻などの美術品が邸内の至る所に飾られているという。しかしその地下には、大統領の宿泊先となるホテルへの通路があるともいわれている。
変わりゆく赤坂。その中でアメリカ大使館はベールに包まれたまま静かにそびえるのだ。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年7月5日号