「もの言う野党」の強さは、果たして国政選挙でも通用するのだろうか。
6月23日に投開票が行われた東京都議会議員選挙。候補者全員の当選が決まった自民、そして公明の与党は、いわば下馬評どおりの完全勝利。その傍らで、共産党が8から17へと議席を倍増させ、野党第一党に踊り出る躍進ぶりを示した。
共産党がここまで議席を増やせたのはなぜか。政治評論家の浅川博忠氏が解説する。
「都民の関心事は第一にアベノミクスで日本経済が本当によくなるのかということ。そして、第二に原発や憲法改正、歴史認識も含めた外交など、国の根幹にかかわる問題がどうなるのかという点。そこで共産党は消費増税、TPP参加、原発再稼働、憲法改正など与党の政策にことごとくNOを突き付けて、右寄り政権に対する対極的な存在として格好の牽制役になったのです」
はっきりと野党色を打ち出す戦略。その分かりやすさがアンチ自民票だけでなく、逆風下の民主票や無党派票をも奪った。
「景気回復の実感が持てない有権者は、自民・公明以外の候補者を支持したかった。でも、消費税もTPPも原発も、ゆくゆくは国民の生活に直結する問題に玉虫色の政策しか出せない民主党や、内紛劇を抱える日本維新の会も頼りない。そこで、唯一の野党を掲げてその他すべての党をオール与党に位置付けた共産の“庶民の味方”的な図式は注目されやすかった」(全国紙の政治部記者)
前回の旋風から一転。43議席から15議席に減らして大敗を喫した民主党は、「有権者の話を聞く態度を固めきれなかった」と中山義活東京都連会長が反省の弁を述べたように、確固たる政策が示せなかった分、迫力に欠けた選挙だったと言わざるを得ない。
だが、「北区、世田谷区、江戸川区、品川区など、現職を含めて2人以上を出した選挙区では、1人に絞れば当選していたかもしれない候補者も多く、民主は逆風下でもう少し上手な戦い方があった」(前出・全国紙記者)との指摘もある。
いずれにせよ、都議選の結果を受け、いよいよ各党が照準を合わせる参院選が7月にやってくる。この勢いのままなら“自公VS共産”の争いになるが、「都議選で示したほどの勢いはなくなるだろう」と見るのは、前出の浅川氏だ。
「共産党は限定された地域での組織票はある程度モノを言いますが、全国規模の参院選ともなれば、そもそも母体が大きくないので複数区でも議席を奪えるところは限られてくる。
かたや民主や維新、みんなの党は、一発逆転で行き場のない反自民の浮動票をいかに取り込めるかがカギとなります。そのためには、やはり一にも二にも与党の政策に対してメリハリのきいた対案を出して有権者に訴えることが絶対条件となります」(浅川氏)
アベノミクス効果がなかなか実感できない今。日本の将来を見極めるうえでも「確かな野党」の存在が欠かせない。