【書籍紹介】『周五郎伝 虚空巡礼』齋藤愼爾/白水社/3570円
これまで幾度も山本周五郎の作品や人が論じられたなか、改めてその主要作品と生涯を追った大作。出生地をめぐる過去から、馬込文士村での生活、妻を病で失っての再婚、そして63歳で亡くなる晩年までが丹念に描かれるが、貧しく中学進学を断念させられた周五郎には強烈な学歴コンプレックスがあり〈その「学歴コンプレックス」という宿痾から周五郎は終生、解放されることはなかったのではないか〉と著者はいう。新たな周五郎像が浮かぶ。
※週刊ポスト2013年7月5日号