「今はお散歩番組の戦国時代。各番組がどうやったら視聴者に見てもらえるか、工夫をこらしています」
と言うのは、散歩番組に詳しいライターの広川峯啓さん。4月から新たに、国分太一(38才)がナビゲーターを務める『国分太一のおさんぽジャパン』(フジテレビ系)と、中田喜子(59才)と原日出子(53才)という女優2人がお出かけする『おでかけ日和』(フジ系)の2番組も加わって、お散歩番組はまさに花盛り。東京地区では毎日どこかのチャンネルで放送されているほどだ。
お散歩番組をメジャーにした存在といえば、なんといっても6月29日で1周忌を迎える地井武男さん(享年70)がナビゲーターを務めた『ちい散歩』(テレビ朝日系、2006年4月~2012年5月)。同番組にスタート時から携わった放送作家の勝木友香さんが言う。
「普通の番組は情報をなるべく詰め込もうとするものですが、『ちい散歩』は逆。なるべく情報を削り、ナレーションも少なくし、ゆったりとしたテンポの番組にしたところ、地井さんの優しく人懐っこいキャラクターとあいまって、人気番組になりました」
地井さんは、道端にきれいな花が咲いていたら立ち止まり、路地にねこがいたら声をかけ、民家にみかんがなっていたら住民に「もらっていいですか?」とお願いした。その姿に、視聴者は地井さんを間近に感じ、散歩を追体験できたのだ。
「目に映るものに反応するので、毎回、何が起こるかわかりません。予定調和ではない、そうしたライブ感があるから、今日は何が起きるんだろうと、視聴者にワクワクしながら見てもらえるんだと思います」(勝木さん)
それは人気を博す散歩番組に共通するものだろう。地井さんが病気治療のために降板すると、跡を継いだのが加山雄三(76才)の『若大将のゆうゆう散歩』だった。
「加山さんは地井さんの歩き方を引き継ごうとされていたようですが、やはり大スターだけに地井さんとは違った雰囲気が出ていますね。散歩する人によって気がつくところ、興味の向くところが違う。実はそうしたタレントの素顔が垣間見えるのも、バラエティー番組にはない、お散歩番組の人気の秘密なんです」(前出・広川さん)
例えば6月20日の放送では、高島平を練り歩く若大将が、都営三田線の高架下に玉石専門店を発見。若かりし頃からスキー場経営などを経験してきた加山だけに、「高架下は安く借りられるのかねェ」というひと言も自然に出る。
「加山さんはこの番組を始めるまで、散歩をしたことがなかったそうです(笑い)。この番組では、ひとつの散歩で2時間くらいは歩き、時には1日に2本撮影して、4時間以上歩くこともあります」(前出・勝木さん)
※女性セブン2013年7月11日号