これはもはや子供のアニメの域を超えたといっても過言ではない。第1作から39年。完全リニューアルし、現在放映中のテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』(MBS-TBS系)である。ストーリーは徹底的にリアル、メカ描写は精密無比、高度な3D技術を駆使して描き上げられた迫力は、ハリウッド映画に比肩するレベルにまで達している。“クールジャパン”が到達したアニメ技術の頂点、新ヤマト・ワールドとなった。
「策謀蠢(うごめ)く空。暗雲立ち込め、眼前に聳(そび)えるは紅き太陽。その口、あまたの炎。その腕、紅蓮(ぐれん)の業火(ごうか)。死中に活を求め、絶対の罠を突破する決意の一撃を放て」
懐かしさに誘われてアニメを観た人も、ひとたびこの難解なナレーションを耳にした瞬間思うはずだ。「これがあのヤマト?」と。
子供の頃に観た作品とは異なり、徹底的にリアリティにこだわったその映像は観る者を圧倒。大人が観ても、いやむしろ大人こそが楽しめる作品に生まれ変わっているのだ。
ストーリーは存亡の危機にある地球を救うため、宇宙の彼方にあるイスカンダルを目指すという旧作のままだが、当時の作品にあった多くの矛盾点を設定の再構築によって解消した。
たとえば、旧作で沈没した戦艦大和を改造したという設定は、「戦艦大和の残骸を偽装して建造した」と変更された。
隊員の数も大幅に増え、それぞれの役割やキャラクターも変わった。巨大戦艦を動かすには旧作のままでは少なすぎた。レーダー手・看護師など複数のポジションを兼務していた森雪は、「艦内勤務は3交代制」という設定になったことで、その役割が新キャラクターの岬百合亜らに割り振られた。
また、旧作ではほとんど描かれることのなかった敵・ガミラスの内情や人物像が詳細に描かれるようになっている。ガミラス内部の権力闘争、人種問題などが描かれ、“21世紀のヤマト”にふさわしい現代的なテーマを内包している。
旧作との違いで極めつきは、戦闘艦船をはじめとした緻密なメカニック描写だろう。用途によってさまざまに描き込まれた数多くの艦船が宇宙空間で迫力ある艦隊戦を繰り広げる映像は、テレビのアニメーションとは思えない。隊員が身につけるエンブレムのデザインも所属によって変えるなど、小道具へのこだわりも見逃すことができない。
「凄まじい労力をかけてメカ描写を手描きの作画で作り込んだ旧作のヤマトは、いま考えてもすごいレベルの作品でした。手描きという当時と同じやり方で膨大なカット数のあるヤマトをきちんと動かしリメイクすることは不可能に近く、それを可能にしたのがCG技術でした。ハリネズミのような砲塔のついた戦艦も、最初に3Dでモデリングすればある程度自由に動かすことができるからです」(出渕裕総監督)
※週刊ポスト2013年7月5日号