TPP参加の是非を巡る議論が日本国内で続いている。しかし交渉開始を目前にしたいま、アメリカ側は日本の「食品安全基準」までターゲットにしてきた。
政府はTPP参加でGDPを3兆円以上押し上げる効果があるというが、その言葉に踊らされていると「食の安全」を売り渡すことにもなりかねないのだ。
食の安全に関する情報発信を行なう「食政策センタービジョン21」主宰の安田節子氏はこう指摘する。
「日本の食品は品目に差があるものの全般的に添加物や残留農薬の基準、あるいは遺伝子組み換え食品などの表示義務がアメリカに比べて厳しく、アメリカ側は以前から『外国貿易障壁報告書』などを通じてその緩和を求めてきた。TPP参加に伴い、アメリカ側は『国際協定だから国際基準に従うべき』といっている」
また、『放射能汚染からTPPまで―食の安全はこう守る』の著者、小倉正行氏は、これらの要求がそのまま通った場合、消費者にとってのリスクが生じると説く。
「日本で認可されている食品添加物が約800種類に対して、アメリカでは3000種類もの添加物が使用されている。アメリカでは企業が届け出し、手順を踏みさえすれば新種の添加物の使用が可能で、消費者が被害を訴えない限り、規制されることがない。
そうやって使用可能になった新しい食品添加物には、人体への影響について安全評価すらされていないものがある。もちろん、これらのすべてが危険だと立証されているわけではないが、日本で安全性が確認されていない2200種もの添加物がなし崩し的に日本の食卓に入ってくることには、危険性が伴います」
添加物の人体への影響はいまだ不明な点が多い。日本で認可されている添加物でさえ、その危険性が指摘されるものもある。
たとえば、食用着色料に関しては、安息香酸ナトリウムという別の保存料と同時に摂取した場合、子供たちに多動性障害を引き起こすリスクが上がったという英サウサンプトン大学の研究レポートがある。
だからこそ、より安全性が求められるべきであり、日本では国際的に広く使われる添加物についても、安全性が認められてないものに関しては、国内で認可していない。
「農薬についても、収穫後に使用されるポストハーベスト農薬は、発がん性の危険などが報告されているため、現在日本では認められていません。しかし、これらがTPPに乗じて一気に認可されてしまう可能性がある」(前出・安田氏)
※週刊ポスト2013年7月5日号