今、最も多忙な党首かもしれない。都議選で議席を倍増(9→17)させた共産党の志位和夫・委員長だ。「取材依頼が殺到している」(党広報部)という“大人気”をどのように受け止めているのか、志位氏に聞いた。
──共産党は“第1極”、すなわち政権党を目指しているのか。
志位:もちろんです。ただし単独政権でなく、(連立を組んで)「民主連合政府」をつくろうという方針です。
──でも、共産党に投票した無党派層は、共産党政権がどんな国になるのかまでは考えていない。
志位:私たちが政権をとった瞬間に日本が共産主義にチェンジすると思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。まずは資本主義の枠内で、日本が抱える2つの歪みを正そうというのが我々の目標です。一つは日米安保条約を廃棄して米国の言いなり政治から脱却すること、もう一つは「ルールなき資本主義」を正すことです。
日米安保をやめるというと「とんでもない」という反論が出てきますが、東アジアから南アジアまでの23か国の中で、米国と軍事同盟を結んでいるのは日本と韓国だけです。それでも他のアジア諸国はアメリカと友好的な関係を維持、発展させていますからね。
この改革をやり遂げた上で、国民合意で資本主義を乗り越えた未来社会──社会主義・共産主義社会に進む。「利潤第一主義」という資本主義の害悪を除いてこそ、恐慌、貧困と格差、失業、投機マネー、環境破壊などの矛盾を解消する道が開けます。
──党の綱領には「生産手段の社会化」を掲げているが、トヨタやパナソニックを国有化するということか。
志位:必ずしも国有化ではないんですよ。それがどういう形態を取るかというのはあらかじめ決められない。主要な生産手段を社会全体の手に移すことが大切であり、その形態は国民合意で決めていく。その際、資本主義の時代に達成された自由と民主主義は、絶対に一つ残らず発展的に受け継いでいくことが大前提なんです。
──私達、『週刊ポスト』が共産党政権批判をしてもOK?
志位:もちろんです(笑い)。資本主義時代に達成された自由と民主主義は断固として守り発展させることを約束します。
──しかし、世界的に共産党は総じて評判が悪い。現に、旧ソ連や中国では言論の自由はありません。
志位:政治面では、ソ連型の体制なんですね。ソ連では憲法の中に「共産党が国を指導する」と書き込んでいました。中国であれベトナム、キューバであれ、そうした内容を書き込んでいる。しかし日本共産党は、特定の政党や世界観を特別扱いしないということを明瞭に掲げています。
解体したソ連は社会主義とは無縁の体制でした。だから我々は、ソ連共産党が解体した時に〈諸手を挙げて歓迎する〉という声明を発表したんです。「共産党政権ができたら一党独裁国家になってしまう」という誤解は、丁寧な説明で解いていかなくてはなりません。共産党が国会の中心になったからといって、民主主義を破壊するわけではないのです。
※週刊ポスト2013年7月12日号