最近、就労支援施設などでにわかに注目される存在がある。無職の中高年が増加していることだ。都営住宅に住むYさん(女性、79歳)は早くに夫を亡くし、女手一つで2人の子供を育ててきた。長女は結婚して家を出たが、47歳の長男は自宅で引きこもり生活を続けている。
昨年の夏、Yさんは出先で転んで骨折して病院に運ばれ、入院した。退院後もこれまでと同じように長男の食事や洗濯などの世話を続けているが、体に障害が残ったため、長男の将来に対する不安が増した。
「そこでYさんは周囲に長男の就職を世話してほしいと頭を下げて回っている。履歴書を長女に書かせ、『どうせ調べっこない』と学歴詐称はもちろん、趣味や特技も嘘八百を並べ立てている。
長女が『そんな嘘書いて採用されても、バレたらクビになる』といっても、『私がいなくなったら姉のあなたに迷惑がかかることになるのよ』と返され長女はもう何もいえなかったようです。
Yさんにいわせると、長男は引きこもりではなく、『性格が優しすぎて感受性が強く繊細なだけ』だそうです」(Yさんの友人)
自分がいなくなっても、周囲に迷惑をかけず何とかまともに生活してほしい──その切なる願いは、残念ながら子供に共有されないことが多い。引きこもりの若者を支援するNPO法人ニュースタートの代表、二神能基氏はこういう。
「マスコミは親が死んだら生活できなくなるといいますが、子供たちに親が死んだらどうなると聞くと、“生活保護でも受けましょうかね”と発言する人が多いのが現実です。日本は貯蓄大国で、彼らは贅沢する習慣がない。親が残した貯金で何とかやっていけると思っていますよ」
※週刊ポスト2013年7月12日号