7月1日、報道番組のなかで安藤美姫が出産を告白した。大きな話題になり、安藤の公式FBには中傷コメントを書き込む人も出ている。他人の生き方にとやかく口出ししたがる「ネット小姑」にどう対処すべきか。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が「安藤美姫の出産にああだこうだ言う人を適当にあしらう大人力」を伝授する。
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テレビ朝日系「報道ステーション」の中で安藤美姫が唐突に出産を告白したのは、今月1日の夜でした。衝撃のニュースに、テレビの前で飛び上がって三回転半ジャンプをした視聴者もいたとかいないとか。3日には安藤から、父親の名前を公表するつもりがないことや、報道の自粛を要請するファックスが報道各社に届きました。
いろんな考え方はあるでしょうけど、たいへんおめでたいことです。競技者としての迷いや周囲からのプレッシャーなど、乗り越えなければいけない壁がたくさんあったことでしょう。何より、今のように外野からあれこれ言われる羽目になります。
あなたの周囲にも、安藤美姫の出産に対して、べつに関係ないのに文句を付けたがる人がいるはず。本人は「義憤」にかられて意味のある批判をしているつもりなので、面と向かって「そんなの大きなお世話だよ」と言ったら、さらにムキになって面倒な展開になりそうです。パターン別に、大人としての適当なあしらい方を考えてみましょう。
まず「いろんな人が彼女をサポートしているのに、出産を選ぶなんて無責任だ」と憤っている人の場合。「ひとりの選手にぶら下がっている側の人たちに、そんなこと言う権利はないよ。やせ我慢して祝福するのが大人の美学じゃないの」と諭したいところですけど、そういう人は会社なり何なりに対するぶら下がり根性が骨の髄までしみ込んでいるので、そんな美学を理解するつもりはありません。「だからこそ競技に復活するわけだし、むしろ商品価値は上がるわけだから、いいんじゃないの」と、ぶら下がっている側に寄り添った見解を述べれば、「なるほど。だったら、まあいいか」と納得するでしょう。
「生まれたばかりの赤ん坊がいるのにオリンピックを目指すなんて、子どもがかわいそうだ」とか「父親の名前を隠したまま育てられる子どもが不憫だ」なんて子どもに勝手に同情して勝手にいい気持ちになる人も、とくに女性にちらほらいそうです。どんな育て方をするかは、それぞれの親子が自分たちの置かれた状況の中で決めればいいこと。自分の価値観を押し付けて批判するのは、極めて失礼だし傲慢です。
他人の育児や出産にケチをつけたがる人を見ると「この人、自分が歩んでいる道に不安や後悔があるのかな。その埋め合わせに、自分のライフスタイルや生い立ちを強引に肯定したいのかな……」なんて思いそうになりますが、まさかそんなことは怖くて口にできません。半端に反論しても、地雷を踏むだけです。心の中で「この人も、たいへんなんだな」と同情してあげつつ、あえて無責任な口調で「まあ、それはそれで楽しい人生なんじゃないの」と答えておきましょう。相手は呆れて、早々に話題を打ち切ってくれます。
どういうパターンにせよ、話がややこしい方向にいきそうになったら、「いやあ、無事に生まれて本人はアンドーしてるだろうね」とダジャレで返しておくのがオススメ。思いっ切りすべってもかまいません。スケート選手の話題だけに。