痔は立派な国民病だ。調査会社キューライフが2年前に日本人5779人を対象にネットで調査を行なったところ、75.2%の人が痔に悩んでいた。さらに、厚生労働省によれば、2011年の外来、入院の推計総患者数は14万人にものぼる。
一方、アメリカのヘンリー・フォード病院の調査では、800人の成人の肛門を調べたところ、なんとそのうち86%の肛門にイボ痔が見つかったというから驚きだ。都内の45歳の男性営業職は「あの体験」の鮮烈な記憶を告白する。
「暴飲暴食した翌朝、下痢気味でトイレに駆け込んだのが地獄の苦しみの始まりでした。真っ白な便器が真っ赤に染まり、激痛が襲って卒倒しそうになりました」
50代の男性もいう。
「私の場合は妙な残便感が続いたんです。やがて排便のたびに飴玉くらいのサイズのイボ痔が肛門から顔を出すようになりました」
2人とも共通しているのは、
「すぐ治るだろうとタカをくくっていたのが間違い。少しずつ悪化していきました」
という点。しかも両人とも、症状を誰にも相談しなかった。前出・45歳営業職の男性が語る。
「恥ずかしくてお尻の相談なんかなかなか他人にできるものではありません。肛門科に行くのも、躊躇しているうちに時間がたってしまって」
彼らのみならず、専門医を訪ねることに対して、多くの人が、「患部を見せるのが恥ずかしい」と答え、「診察や手術が痛い」「長期入院が必要」「社会復帰やリハビリに時間がかかる」という認識をもっている。
だが、ただ恥ずかしい、面倒だという理由で放置するのは余りに危険すぎるのも痔の特徴。本誌が今回取材した医師たちは、
「排便時の出血、肛門から何かが飛び出しているような異物感、そして激しい痛みがある場合、迷うことなく肛門科や外科の診察を受けるようにしてください」
と声を揃える。
※週刊ポスト2013年7月19・26日号