働かず、親のカネに頼って生きていく子供。兄弟は「親と本人の問題」と傍観するわけにはいかない。
親の遺産相続、親の死後の生活資金、配偶者とのわだかまりなど、兄弟の身にも次々に起きる招かざるトラブルをどう解決するか。
働かない兄弟の存在は、親を亡くした時に、新たな問題を浮き彫りにする。遺産相続のトラブルである。Aさん(48)の兄(50)はいわゆる起業家だというが、その軍資金はすべて親が工面していた。総額はざっと2000万円。
事業はほぼ失敗に終わったため、親の財産を食い潰しただけ。それなのに親が亡くなった時、兄は当然のように「遺産は平等に分配しよう」といったという。それには、最期まで親の介護をしていたAさんの妻はカンカン。「もう十分受け取っているはず。どれだけ取るつもりなの!」と怒りが収まらない。
遺産相続では、親(被相続人)から生前、多額の利益を受けていた兄弟(相続人)を「特別受益者」と呼ぶ。その人が遺産を法定相続分どおりに受け取ると、合計で他の相続人よりも多く受け取ることになる。それは不公平なので、法的に是正されることになる。
弁護士の好川久治氏が解説する。
「特別受益とは、家を建てる際の資金や起業資金など、ある程度のまとまった額のおカネが該当します。Aさんの場合は間違いなく認定されるでしょう。
ひきこもりやニートも長年にわたれば、その生活費は多額になる。ただし、それが直ちに特別受益に当たるのかといえば、そうならない。親が働かない子供に出す、短期間で消費される生活費は扶養義務を履行しているに過ぎないからです。
遺産も平等に分けられるでしょう。それでは兄弟間で親からもらう合計額が大きく異なりますが、法的には認められた権利なのです」
※週刊ポスト2013年8月9日号