日本国内に居住する外国人は1992年の128万人から、昨年は203万人にまで増加した。それにともない公営住宅に住む外国人の数も増えている。そうした中で特異な例が、神奈川県営いちょう団地。約3600戸の3割を外国人世帯が占め、住人の国籍は20か国を超える。
同団地で暮らす外国人と地域社会の「共生」の取り組みは、試行錯誤を繰り返しながら続けられており、現在では自治会の役員にまで外国人のメンバーがいる。地域の防災リーダーとして、日本人を含めた5か国のメンバー20人からなる〈防災トライ・エンジェルス〉という多国籍青年団も結成された。
10代以下の世代では、さらに融和は進んでいる。団地内にある横浜市立いちょう小学校の全生徒数は161人。うち外国籍や外国にルーツを持つ子供たちは122人と7割以上を占める。
「日本人以外の生徒でも9割は日本で生まれた子供たちです。ベトナム国籍の生徒だけでも58人いて、日本人のほうが少数派なので、子供たちは国籍など全然気にしてませんよ」(田中秀仁校長)
毎年、入学時に日本語をまったく話せない児童が3人ほどいるというが、同じ国籍で日本語も話せる生徒が通訳を買って出るため、生徒間のコミュニケーションは問題なく成り立ってしまう。
「色々いすぎて(国籍は)関係なくなっちゃう。友達は“国”で選んだりはしないよ」(4年生の日本人女子児童)
人口激減時代を迎えた日本人が、これから直面する「外国人との共生」という課題。その最前線は、ニッポンの団地にあった。
撮影■小笠原亜人矛
※週刊ポスト2013年8月9日号