犬のフン害に頭を抱える大阪・泉佐野市が「飼い犬税」の導入をブチ上げてから、はや1年。しかし「飼い犬税」には異論も多く、未だ検討中の段階で、フンの放置は一向に減らないまま。この状況を打開するため、泉佐野市では今夏から、「犬のフンGメン」が活動を始めている。連日の猛暑の中、飼い主とバトルを繰り広げるGメンに密着。その模様をお伝えしよう。Gメンが向かった先は、関空対岸の「りんくう公園」。GメンのA氏が語る。
「隣接するショッピングモールには、市外から来る犬連れの買い物客が多いんですよ」
確かに公園にある約3キロの遊歩道は、恰好の犬の散歩コースになっているようで、木の根元や芝生には干からびたフンが散見された。
まず、Gメンは散歩している飼い主を、遠目にチェックする。袋やスコップを持っていない飼い主は、フンを放置する可能性が高い。A氏は手ぶらで散歩する中年女性に近づいて、啓発チラシを手渡そうとした。ところが注意されるや否や、犬……ではなく、オバチャンが“噛みついてきた”。
「私が何したん。散歩してるだけやんか!」
飼い主の異変に気づいたのか、犬がGメンを睨んで唸っている。犬嫌い記者の背筋は凍りついた。何とかなだめて、ビラだけは受け取ってもらったが、「ちょっと注意するだけで喧嘩腰になられることもよくあるんですわ」とA氏は苦笑する。
「『こんなチラシ、ゴミになるだけや』などと受け取ってくれないこともある。中には、『近づいたらアカンで、この犬噛みつくでェ』といって大型犬を使って、“威嚇”されることもありましたよ」(A氏)
難しいのは、「現行犯」でないと実際には取り締まりづらいことだ。この飼い主の犬の仕業だという証拠が必要なので、犬がフンをする瞬間、そしてそこから立ち去る瞬間を押さえなくてはならない。犬の横に飼い主がいる場合はまだいいが、最近は犬のリードを外して散歩する飼い主も多い。そうなると、
「放し飼いでは飼い主すら犬がどこでフンをしたか気づいてない。『証拠はあるんか』、『DNA鑑定してみるか』などといわれるのがオチですわ」(A氏)
もちろん愛犬家すべてのマナーが悪いわけではない。だが取材中にも、呆れた飼い主たちの行状を目の当たりにしたのも事実である。放し飼いの柴犬が道路端でフンをしていた。飼い主と思しき中年女性は、ベンチに座ってタバコを吸って休んでいる。犬が用を済ませた後、そのまま行こうとするので、記者が犬の動きにビクビクしながら「片付けないんですか」と声をかけたところ、こう言い放った。
「自然に戻って肥やしになるからええやん」
メチャクチャな理由だが、聞けばこれでもまだ理屈が通っているほうらしい。「家が近いからええねん」と居直る者や、「じゃあアンタが食べや」などと意味不明なことをいわれることもあるという。
※週刊ポスト2013年8月9日号