木内幸男氏は土浦一高、取手二高、常総学院で監督を歴任した名将。取手二高、常総学院では優勝を経験し、春夏通算40勝は歴代5位である。木内氏の「観察力」はやはりひと味違う。
●甲子園では手から滑れ
木内氏は、甲子園ではヘッドスライディングのほうが足から入るスライディングよりも有効だと説く。かつて『常陽新聞』のインタビューでこう語っている。
「夏は高校生用に砂を多くするから非常に砂っぽいグラウンドになる。最初に水をたっぷりまいて、固まって乾いた状態の時に足から滑ると、タイミングはセーフなんだが、スパイクと塁の間に砂が入ってアウトになることが多い。なんであれがアウトなんだと思って映像を確認すると、砂の影響で文句なくアウトだと分かるんだよね。そういうことが起きるから、甲子園では手から滑るしかない。足から入るとアウトになる確率がうんと高い」
●甲子園の魔物は「外野」にいる
木内氏は同インタビューで、よくいわれる「甲子園の魔物」についても語っている。それは銀傘(ホーム側屋根)と内野スタンドの間に空いた隙間のこと。特に要注意なのはレフトだとか。
「この空間に打球が飛ぶと、なぜかレフトだけ球を見失ってしまう。同じ条件のはずなのに、センターとライトにはない。これは経験を積まないと分からない」(木内氏)
昨今の野球の常識では、外野の中ではレフトに守備力の低い選手を起用することが多い。しかし、その常識は甲子園では通用しない。レフトこそ鬼門なのである。
※週刊ポスト2013年8月9日号