夏休みの渋滞対策、知っていればイライラも少なくて済むかもしれない。「渋滞学」の権威で、東京大・先端科学技術研究センターの西成活裕教授が著書『「渋滞」の先頭は何をしているのか?』(宝島社新書)の中で興味深い調査を行なっている。「渋滞の始まりならば左車線が空いている」というものだ。
渋滞開始時は、多くの人が右車線(=追越車線)へ入ろうとするため、統計的には3車線の場合、左車線25%、中央車線35%、右車線40%という車両の分布になるという。皮肉なことに、渋滞は追越車線から始まっているのだ。
また2車線の場合の渋滞時の平均速度を出したところ、走行車線が時速35kmに対し、追越車線は25kmというデータが出た。実際に実験をしたところ、追越車線よりも、走行車線をそのまま行った方が目的地に速く着いたという。
ただ西成氏は〈短い距離で見ると追越車線が早い場合もあり、またこのような情報を皆が知ってしまうと逆に走行車線に車両が集中して遅くなるだろう〉と付記している。
交通関係に詳しいジャーナリストが語る。
「渋滞開始時なら、走行車線の方が速いのは事実。追越車線に出た車の後続車がブレーキをかけ、それがさらに後続のブレーキ連鎖を生んで、渋滞するからです。
しかし一度ハマってしまえば話は別。渋滞はどの車線も動かないから渋滞なわけで、車線変更してもあまり意味がない。無理に車線を変えることがさらに渋滞を延ばすということを考えれば、我慢して同じ車線を走るのが、早めの渋滞解消に繋がり、一番賢いかもしれませんね」
※週刊ポスト2013年8月16・23日号