日々、携帯電話に送られてくる出会い系サイトなどからの迷惑メールにうんざりしている人は多い。だが最近、迷惑のはずが思わず笑ってしまう、「面白過ぎる迷惑メール」が増えている。
本誌記者のもとに最近、一通のメールが送られてきた。件名は、「信じられないかも知れませんが、私はチンパンジーです」。
信じられるわけがない。しかし、誰がいったい何のために? 好奇心に駆られた記者は、メールを開いた。
「はじめまして。早苗といいます。キーボード越しで、こうしてメールとしてメッセージを伝えているだけでは分からないかも知れませんが、私はチンパンジーです。メスのチンパンジーです。2年に渡る知能訓練を受けて、自分の思考をこうして文章としてアウトプットできるようになりました」
ここまで読んでも、送り主の目的がなんなのか、全く手掛かりが掴めない。勢い、先を読み進めた。
「人間であるあなたとは、異なる存在です。しかし、いま、私は、あなたへの興味を止める事ができない。チンパンジーの中で人間に近い私と、人間でありながらチンパンジーに近いあなたは、とても似ている。わたしがあなたに惹かれたのは、そこに大きな理由があります。
勿論、あなたのルックスが人間よりもチンパンジーに近い事実、その事も大きいですが。だから、自信を持ってください。人間界ではブサメンで非モテなあなたでも、チンパンジー界では、イケメンです。(中略)そしてイケモンキーのあなたに、私を知って欲しいという気持ちが日増しに強くなってきています。チンパンジーの私が、人間のあなたに深く、強く、恋をしているんです」
文面の下には、インターネットのURLが表記され、「ここで、私とチャットをする事ができます。チンパンジーであることを証明できます」と添えられている。
思わず興味本位でクリックすると、そのサイトには本物のメスのチンパンジー……ではなく、ギャル系の女性の写真が現われ、出会い系サイトの登録に誘われるではないか!
ここまで来て、はたと気づいた。これは出会い系サイトに誘導する「迷惑メール」の一種だったのだ。
それにしてもなぜわざわざチンパンジーを装う必要があるのか。おかしいと思い周囲に聞いてみると、「私にも変なメールが来た」「思わず笑って開けちゃった」など、風変わりな迷惑メールの被害報告(?)が出るわ出るわ。
以前は迷惑メールといえば、「セフレ探してます」「今日会えませんか?」といった誘い文句が前面に出ていたはずだが、いまやこうした笑えるコピーがトレンドだという。
「出会い系サイトのメールを送っているのは、アルバイトで雇われた20代の若者たちがほとんど。出会い系サイトへの登録以前に、サイトのURLをどれだけクリックさせたかで成功報酬が決まったりするから、集められた若者たちが試行錯誤するなかで、あからさまな出会い系より、思わず笑ってクリックしてしまう面白メールを作るケースが増えてきたんです」(ITジャーナリストの三上洋氏)
面白過ぎる迷惑メールは、若者たちの努力のたまもの(?)というわけか。ただしこうした迷惑メール、実は笑って済まされる問題ではない。
「そうしたメールに紛れて、ウイルス感染を狙ったサイバー攻撃のメールもあるから要注意です。また、迷惑メールを面白がって開けることは、迷惑メールの蔓延につながるので出会い系サイトの思うツボでもあります」(前出・三上氏)
※週刊ポスト2013年8月30日号