8月12日、高知県四万十市西土佐にある江川崎地域気象観測所で、国内観測史上最高気温となる41.0度を記録した。しかし、この「41.0度」という新記録自体を、疑問視する向きがある。気象庁の気温観測地点は全国に927か所あるが、観測条件を一定にするために温度計は地上1.5mの高さに設置されており、「人工熱源からは充分に離す」「温度計の周囲は30平方メートル以上の芝生を敷く」というルールがある。ところが江川崎の観測所は、芝生が剥げている上、すぐ隣は広大なアスファルトの駐車場なのだ。
「熱のこもるアスファルトが、測定気温の上昇に影響を与えたことは否定できないと思います。正確な気温を測定する場所として、この江川崎観測所は、ベストな環境とは言い難いんです」(気象予報士の森田正光さん)
これに怒り心頭なのが、2007年8月に40.9度を記録して以来日本一の記録を保持してきた埼玉県熊谷市の住人である。
これまで熊谷市は『あついぞ!熊谷』をキャッチフレーズに、うちわやTシャツなどの販売や、各飲食店で辛いメニューを提供する「くま辛」なるプロジェクトも展開するなど、「暑さ日本一」をPRしてきた。それだけに、日本一の座を奪われた地元住人の悔しさは大きい。
「冗談じゃないですよ! 熊谷の観測所はちゃんと芝生の上にあるし、周囲に熱源もありません。隣がアスファルトの観測所なんて、不公平です」(40代男性)
「熊谷の観測所も、芝生を刈って隣を駐車場にしたらいいんです。そうしたら、すぐに42度くらいいくんじゃないですか?」(30代男性)
実際、2010年9月に京都府の京田辺市で39.9度を観測した時には、温度計にツタが絡まっていることが発覚し、ツタにより風が妨げられ、熱が籠もって温度が上がった可能性があるとして、気象庁が記録を認めなかったことがある。
「今回も京都と同じケースだと思います。気象庁はちゃんと現地に行って観測所の調査をしてほしいです」(40代女性)
熊谷市民がこう憤る一方で、「くま辛」プロジェクトの実行委員会事務局長の大関暁夫さんは冷静に語る。
「ぼくはむしろ、日本一を四万十市に譲れてよかったと思っています。暑さアピールで盛り上がるのは最初だけで、暑いことが定着してくると、途端に“行きたくない町”になるんです。長い目で見ると経済効果はマイナスなんですよ。気温以外で魅力的なものを作らないとダメ。四万十市も、単に“暑さ日本一”だけをPRしていくと、すぐに観光客は減ってしまうと思いますよ。これからは、お互い協力できるところはしていきたいですね」
町興しも“ヒートアップ”しすぎには要注意です。
※女性セブン2013年9月5日号