飛び降りたマンションのベランダには、歌手の藤圭子さんがはいていたはずのスリッパの片方が残されていたという。
「この部屋の主は藤さんの知人である30代男性。この男性とは夜の街で知り合ったようで、部屋からは遺書なども見つかっていない。どうやら突発的な自殺のようだ」(捜査関係者)
突然の死が報じられるまで、藤さんの消息は関係者の間でもとされていた。芸能関係者がいう。
「今年3月、“藤圭子”の名付け親であり『圭子の夢は夜ひらく』など数々の代表曲を作曲した石坂まさを氏が亡くなった。しかし通夜・告別式に藤の姿は最後まで見えなかった。その時、誰も藤と連絡がとれず“一体どこにいるのか”と心配する声も多かった」
最後に藤の動向が世間の話題となったのは2006年ごろ。ちょうどニューヨークのJFK空港での「現金押収事件」が報じられた時期だった。手荷物検査で発見された藤さんの所持金は、なんと約42万ドル。当時のレートで5000万円にも上る大金だった。
藤さんはその年に出演したテレビ番組で「5000万円はカジノで使うためのお金だった」と主張。その頃すでに世界中を旅していてほとんど日本にはおらず、ファーストクラスの航空運賃やホテル滞在費などで「5年間で5億円は使った」とも打ち明けている。
藤さんの娘は、日本が誇る歌姫・宇多田ヒカル(30)である。宇多田はCDや楽曲配信などによって年間10億円を下らない額をコンスタントに稼ぎ出しているともいわれ、家族事務所の役員だった藤さんにも、相当の収入があったと見られている。ちなみに藤の2004年の納税額は5966万円、推定年収は1億6800万円だった。
しかし藤さんの浪費癖はその資産を食いつぶすほどエスカレートしていたという。藤を知る音楽関係者の話。
「彼女の金遣いの荒さは業界でも有名。海外ではカジノ三昧だし、東京・新宿のホストクラブでは目が飛び出る額の高級シャンパンやワインをどんどん開けていたという噂も聞いた。近年はロスに借りていた超高級マンションの家賃の振り込みも滞ることがあり、東京に戻ってきていたらしい。ある知人には“今はもう2000万円くらいしか持っていない”と話していたようだ。カネが尽きるのは時間の問題だった」
※週刊ポスト2013年9月6日号