来年予定されている消費税増税。その雲行きについて、ジャーナリスト・須田慎一郎氏が指摘する。
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安倍晋三首相は、最終的に消費税率アップを決断するのかどうか各マスコミの関心がこの点に集中しつつある。
というのも、この一件を巡って、これまで安倍首相の快進撃を支えてきた「チーム安倍」が空中分解しかねない要素をはらんでいるからだ。リフレ派の面々は「増税すれば景気は一気に悪化する」(浜田宏一・内閣官房参与)として、消費税増税に反対の立場をとっている。
これに対し財務省に近い勢力は、麻生太郎・財務相を筆頭に「当初の予定通りやらせて頂きたい」と強硬に税率アップを主張している。安倍首相としては完全に股裂き状態に置かれてしまったかのようだ。だが、財務省幹部は自信満々にこう話す。
「マスコミは面白おかしくこうした”政権内対立”を煽っていますが、実はすでに決着はついているのです」
どういうことか。官邸の中枢スタッフが証言する。
「浜田イェール大学名誉教授は、財務省サイドからの猛烈な説得工作を前に、“完オチ”の状態です。もはや来年4月からの消費税率アップは確定したと見ていい」
その浜田参与の説得にあたったのが、元財務次官の丹呉泰健・内閣官房参与だという。
「丹呉氏は参与として官邸にほぼ常駐していますが、その丹呉氏に割り当てられた部屋が『407号室』。一方の浜田氏は常駐こそしていませんが、同じ部屋が割り当てられているのです」(別の官邸スタッフ)
つまり浜田氏が官邸に来た際には、必ず丹呉氏と顔を合わせるよう仕向けられているわけだ。そうした状況・環境であれば、老練な元財務官僚が学者先生を籠絡することなどわけもないだろう。
「この部屋割りは偶然のものではない。財務省の用意周到さは、消費税増税への並々ならぬ執念を感じさせる」(前出の官邸スタッフ)
浜田氏は面子もあるだろうから、すぐには賛成を表明できないだろうが、9月に発表される予定の4~6月期のGDP2次速報値(改定値)を踏まえて消費税増税賛成に回るか、あるいは沈黙する可能性が高い。
※SAPIO2013年9月号