「俺はやっぱスライダーだな」
「じゃあ、自分はフォークで」
「やっぱ、真っすぐっすね」
手にしたボールを握り直しながら、何やら相談しているこの3人。昨年夏の甲子園で1試合22奪三振を記録して度肝を抜いた松井裕樹クン(桐光學園3年)に今年の甲子園優勝投手の高橋光成(こうな)クン(前橋育英2年)、そして157キロの「史上最速男」安楽智大(ともひろ)クン(済美2年)である。
熱戦が続く18Uワールドカップに向かう直前、大阪の合同合宿で揃った「史上最強トリオ」に本誌カメラマンが「決め球の握り」を頼んだ時のひとコマだ。
3985校の頂点を目指してしのぎを削ったライバルたちは、県予選敗退、3回戦惜敗、そして初出場初優勝と明暗を分けた。しかも、3年生と2年生では立場も違う。写真撮影では「俺が真ん中だな」と3年の松井クンが仕切れば、先輩を立てる気遣いを見せる2年生の2人。
とはいえ、日本代表として集まれば目標はひとつ。グランド整備も厭わない姿に、練習試合で対戦した関西大学の大学生たちは「甲子園優勝投手がバット運びしてるよ」と驚く。
スタンドに陣取ったプロのスカウトが熱い視線を注ぐなか、決め球の握りは結局3人とも「真っすぐ」。甲子園「最速トリオ」の活躍で一気に世界の頂点に駆け上ることを期待したい。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2013年9月13日号