五輪招致が達成されれば、「天国」だが、もし落選した場合、一気に「地獄」行きとなる。
「招致失敗の戦犯」として真っ先に槍玉にあげられるのは、失言コンビの麻生太郎・副総理と猪瀬直樹・東京都知事だろうが、もう1人、戦犯の“本命”を忘れてはならない。五輪招致の失敗で最大のダメージを受けるのは、実は安倍首相である。
「参院選は自民が大勝したものの、アベノミクスはとっくに息切れし、約束したサラリーマンの給料も上がっていない。安倍首相がここにきて急に五輪招致に力を入れたのは、他に支持率を維持する材料がないからです。
五輪招致に成功すれば安倍人気はしばらく続くし、株価も上がり、国民に不評の消費増税を強行しやすくなる。しかし、失敗すれば、国民の熱が一気に冷め、国民の生活が良くなったようにみせかけてきた安倍政権の実態が明らかになり、支持率急落に向かう可能性がある」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
市場もそこを見極めようとしている。マーケットバンク代表・岡山憲史氏が語る。
「東京が落選した時に株価が下がるのは、五輪特需がなくなるという理由だけではありません。安倍総理は自ら五輪招致のために各国を歴訪した。それでも勝てないとなれば首相の国際的評価への失望感が広がり、海外投資家の日本売りが起きるからです」
安倍首相は、五輪招致の天国と地獄、その間で危うい綱渡りを強いられている。
※週刊ポスト2013年9月13日号