全国各地で行なわれる祭を彩ってくれるのは、屋台で売られる食べ物である。しかし、それらの原価を調べてみると、イカ焼き=15円、綿菓子=40円、かき氷=30円……。「ボッタクリかよ!」というブーイングが聞こえてきそうだが、夜店側にも「オレたちだって結構辛い」と反論があるようだ。
夜店の商品には当然、材料費に加えて様々なコストがかかっている。とある露天商が語る。
「例えばイカ焼きは、焼き物の機材一式で15万~20万円。屋台設備に15万円かかる。複数の屋台を出す業者も多く、その場合にアルバイトを雇えば人件費もかかる。光熱費も馬鹿にならない」
これに加えて夜店ならではの費用もかかる。商売の場所を確保するための「組合費」だ。関西の露天商組合関係者が語る。
「屋台を出すためには、各地の露天商組合に加盟する必要がある。会費は月額1000円、年1万2000円というのが相場になっている。お祭りで路上販売するときに、組合を通じて警察に道路許可証を申請してくれるなど、何かと融通してくれる」
祭りの会場では、露天商組合による「土割り」とよばれる場所決めが行なわれる。屋台は出店する場所によって売り上げはまったく変わってくるので、どの業者も少しでもいい場所を確保しようと必死だ。これには既得権があり、一度獲得すると、翌年以降もその場所で営業することができるという。
こうした諸費用が、商品の代金に含まれているというわけだ。原材料費が15~20円の前述のイカ焼きの例で見ると、鉄板などの機材、屋台設備、プロパンなどの燃料を加えたとして、その経費は40~50円程度となるという。これを300~500円で売るのだから……あれっ、やっぱりボロけじゃないか!
そうツッコミを入れると、先の露天商はまたも猛反論する。
「見込み違いによって売れ残りが生じたときには当然大損をするから、そのリスクに備えるための“保険”ですよ。何人お客さんが来るかなんて始まってみなければわからないし、この間の隅田川の花火大会のゲリラ豪雨みたいなことがあればもう最悪。1万円も稼げずに、用意した材料が丸ごと残ってしまうことだってある」
祭りの最終日に余った商品が叩き売りされている光景を見たことのある人も多いだろう。捨てるくらいならタダ同然の値段でも売った方がいいという判断である。
中には余った材料について、右から左へ“横流し”する業者もあるというが、食品の場合は、衛生上の問題があってそれも難しい。だから「原価」をいかに抑えて儲けを生み出すかが重要で、その努力は屋台も企業も変わりはない。
※週刊ポスト2013年9月6日号